2010年12月08日

11月マネー統計:現金、流動性預金の隆盛が続く

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■見出し

・貸出動向: 銀行貸出残高は対前年▲2.1%
・マネタリーベース: 日銀による資金供給は加速
・マネーストック: 流動性・安全性選好が強い

■introduction

日銀が発表した貸出・資金吸収動向等によると、11月の銀行総貸出(平残)の前年比伸び率は▲2.1%(前月改定値も▲2.1%)となった。前年割れは12ヶ月連続、特に今年3月以降は▲2%前後での推移が続いており、残高の減少傾向に歯止めはかかっていない。
貸出の減少は大・中堅企業向けが減少している影響が大きいが、中小企業向けでも長期にわたって前年割れが続いている(図表1~4)。
日銀による「成長基盤強化を支援するための資金供給」(研究開発や環境などの分野への投融資に取り組む金融機関に対して、日銀が年0.1%の低利で資金を供給するもの)の第2回目が先月末に実施され、日銀による「成長基盤強化を支援するための資金供給」(研究開発や環境などの分野への投融資に取り組む金融機関に対して、日銀が年0.1%の低利で資金を供給するもの)の第2回目が先月末に実施され、1回当りの上限1兆円に迫る9983億円の資金供給が決定された(日銀からの資金供給は12月に実施)。
今回対象となったのは、7~9月に行われた106金融機関の投融資10564億円であり、9月に実施された第1回(47金融機関、4788億円)から倍増している。地域金融機関の参加が進んだことから、1件当り平均金額は2.4億円(前回は3.6億円)とやや小口化している(図表5)。対象投融資の分野別累計投融資額は図表6 のとおり。環境・エネルギー分野(4581億円)が最大で全体の3割を占め、以下、社会インフラ(1765億円)、医療・介護(1643億円)と続いている。
前回に比べ銀行の取組みが進んできたことは評価できるが、銀行貸出全体の減少傾向に歯止めはかかっておらず、日銀が期待している“呼び水”効果は未だ未知数だ。

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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