コラム
2010年09月22日

金融ADR制度による指定紛争解決機関について

小林 雅史

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2010年4月から金融分野における裁判外紛争解決制度(金融ADR、Alternative Dispute Resolution)の中核となる制度として、指定紛争解決機関制度が導入され、2010年10月から金融機関に対し、指定紛争解決機関との契約締結が義務付けられる。

指定紛争解決機関は、苦情処理・紛争解決手続を実施する機関として業態ごとに主務大臣が指定し、金融機関は指定紛争解決機関との、(1)苦情処理・紛争解決手続の応諾、(2)事情説明・資料提出、(3)手続実施者の解決案の尊重といった内容を含む契約締結が求められる。

2010年9月15日、金融庁から「紛争解決等業務を行う者の指定について」が公表され、9月22日官報においても金融庁告示等で同様の内容が示されている。

指定紛争解決機関は、金融業界の業務別に、

・生命保険協会(生命保険協会に加盟する47社の生命保険業務)
・全国銀行協会(全国銀行協会に加盟する正会員123社等の銀行業務)
・信託協会(信託協会に加盟する社員5社等の信託業務)
・日本損害保険協会(日本損害保険協会に加盟する27社の損害保険業務)
・保険オンブズマン(外国損害保険協会に加盟する19社等の損害保険業務)
・日本少額短期保険協会(日本少額短期保険協会に加盟する正会員62社等の少額短期保険業務)
・日本貸金業協会(日本貸金業協会に加盟する1,720社の貸金業務)

となっている。

9月15日以降、上記の各業界団体は相次いで金融庁から紛争解決機関としての指定を受けたことをプレス発表しており、加盟各社と契約締結の上、10月1日より業務を開始する旨示している。

保険業界については、上記のとおり、

・生命保険については生命保険協会
・損害保険については日本損害保険協会または保険オンブズマン
・少額短期保険については日本少額短期保険協会

が指定紛争解決機関となっている(このほか、協同組合の連合会などが加盟する日本共済協会も、2010年1月26日に法務大臣により共済契約についての指定紛争解決機関として指定を受けている)。

保険会社の場合、契約締結に当たり顧客への開示が求められている「注意喚起情報」への指定紛争解決機関の名称等の記載などが求められており、保険加入時には、顧客は万一の紛争などの発生時には、加入先の保険会社のほか、中立的な機関として指定紛争解決機関にも申立てができることを認識する必要があろう。

今後の指定紛争解決機関による紛争解決状況等について引き続き注視していきたい。
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