コラム
2010年09月13日

国内偏重からグローバル展開へ-機関投資家に求められる不動産運用

  松村 徹

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海外の投資資金は、常に有利な投資商品や安全な投資先を求め、国境を超えてダイナミックに動いており、不動産もその例外ではない。しかし、日本の機関投資家の世界では、不動産においてホームバイアス(運用が自国市場に偏ること)が特に著しく、海外への分散投資という発想はほとんどないように思える。土地バブルといわれた1980年代後半に、日本から巨額の資金が欧米の不動産へ流れたことがあったが、これは国内で行きの場なくなった投資マネーが、勢いあまって海外に溢れ出たに過ぎない。

日本の機関投資家が海外不動産投資に消極的なのは、(1)世界第2位の経済規模を持つ自国市場の大きさと成長性から、わざわざリスクを犯して海外に出て行く必要がなかったこと、(2)不動産は地域性の強いドメスティックな資産で、証券化以前には、海外の実物不動産に直接投資できるのは一部の機関投資家だけだったこと、(3)その機関投資家も1980年代後半に大火傷をして消極的になってしまったこと、が大きな理由として挙げられる。しかし、不動産証券化が普及した現在、REIT(不動産投信)やCMBS(収益不動産向けローンの証券化商品)はもちろん、現地の不動産市場に精通した専門家が運用するファンドを通じた投資も可能となっている。

不動産運用の現場では、タックス・ヘイブンを利用して欧州やアジアで組成されたファンドを通じ、欧米の年金基金や他ファンドの資金が、世界主要都市の不動産に投資され、各都市のアセット・マネージャーが運用を担う、という投資ストラクチャーは普通に見られ、ファンドや資金の国籍を問うこと自体が無意味になりつつある。しかし、日本の機関投資家の多くは、日本の資金を日本人スタッフが国内の不動産だけに投資する純血主義の運用を行っている。

そんな中、中国の2010年4~6月期のGDPが日本を上回ったというニュースが話題となった。また、内閣府は、中国のGDPが2030年には日本の4倍になり、世界シェアの23%を占めて、米国を抜き世界一になると予想している。不動産分野をみても、収益不動産の売買金額規模において、東京はロンドンやニューヨークと並び上位にあるが、香港や上海、北京の存在感も高まってきている。また、投融資残高でみた中国の不動産投資市場の規模が、2011年に日本を抜いて世界2位になるという予測もある。

日本では、人口減少・高齢化トレンドの下、国内のコア・アセットを中心とした不動産運用だけでは、長期安定的ではあっても十分な収益や高い利回りを稼げなくなる可能性が高い。それだけに、アジアなど海外市場の成長を取り込む運用のあり方を、今こそ真剣に検討すべきである。さらに、東京一極集中化が過度に進む不動産ポートフォリオのリスク分散も考える必要があるだろう。国家戦略として、上海やシンガポールなどとアジア圏の中心都市の座を争い、東京の不動産投資市場に世界から投資資金を引っ張る努力も大事だが、受託者責任を持つ機関投資家においては、もっと積極的に世界の不動産市場をフォーカスし、国内に偏重した運用体制を見直すべき時期に来ているのではないだろうか。

(注)不動産経済研究所『不動産経済ファンドレビュー』2010年9月5日号に寄稿した内容を加筆修正したものです。

松村 徹

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