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- 年金払い型死亡保障保険課税の最高裁判決
コラム
2010年07月06日
2010年7月6日、最高裁判所は、年金払い型死亡保障保険(被保険者死亡時の保険給付が一時に支払われず、一定の期間、年金として支払われる保険。収入保障保険等と称されている)の年金への課税について、その年金受給権について、みなし相続財産として相続税が課税されたにもかかわらず、年金にも雑所得として所得税が課税されるのは二重課税に当たるとする原告側の主張を認容した(四名の裁判官全員一致の判決)。
この判決は、本日午後には裁判所ホームページにも掲載されており、2006年11月7日の長崎地裁判決では今回の最高裁と同様の判断が示されたものの、2007年10月25日の福岡高裁判決では、毎年遺族に支払われる年金は、被保険者の死亡時にみなし相続財産として課税された年金受給権とは異なり、二重課税には当たらないとして原告側逆転敗訴となった結果、最高裁に上告されていたものである。
このケースでは、年金払い型死亡保障保険については、その年金受給権について、相続税法第24条により、有期定期金として残存期間(年金支払期間)に応じてつぎのとおり評価されている。
・残存期間 5年以下:給付金額の総額に70/100を乗じたもの
・残存期間10年以下:給付金額の総額に60/100を乗じたもの
・残存期間15年以下:給付金額の総額に50/100を乗じたもの
・残存期間25年以下:給付金額の総額に40/100を乗じたもの
・残存期間35年以下:給付金額の総額に30/100を乗じたもの
・残存期間35年超:給付金額の総額に20/100を乗じたもの
一方、年金については、所得税法施行令により、雑所得として、つぎの算式により所得税が課税される。
・年金額-年金年額×既払込正味保険料総額/年金支給総額
最高裁判決は、相続税課税後のこうした年金への課税は、所得税法第9条第1項第15号(相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するものには、所得税を課さないとするいわゆる二重課税禁止規定)に反するとしたものである。
一方、相続税法第24条は改正されており(2010年4月1日施行、ただし3月31日以前の契約については2011年3月31日までに年金の給付事由が発生した場合に限り旧規定を適用)、定期金に関する権利の評価金額は、
・解約返戻金相当額、定期金に代えて一時金の給付を受けることができる場合には、当該一時金相当額、予定利率等を基に算出した金額のいずれか多い金額
となっている。
すなわち、残存期間に応じた権利の評価金額の軽減が廃止されており、判決のケースでは「定期金に代えて一時金の給付を受けることができる場合」として、当該一時金相当額について課税されることとなる。
今後、年金払い型死亡保障保険については、顧客・生保会社にとって、
・相続時の課税の変更(権利の評価金額の軽減廃止)
・相続税が課税された後に支払われる年金についての課税の廃止
といった多大な影響が生じるものと想定され、今後の動向等について、引き続き注視していきたい。
この判決は、本日午後には裁判所ホームページにも掲載されており、2006年11月7日の長崎地裁判決では今回の最高裁と同様の判断が示されたものの、2007年10月25日の福岡高裁判決では、毎年遺族に支払われる年金は、被保険者の死亡時にみなし相続財産として課税された年金受給権とは異なり、二重課税には当たらないとして原告側逆転敗訴となった結果、最高裁に上告されていたものである。
このケースでは、年金払い型死亡保障保険については、その年金受給権について、相続税法第24条により、有期定期金として残存期間(年金支払期間)に応じてつぎのとおり評価されている。
・残存期間 5年以下:給付金額の総額に70/100を乗じたもの
・残存期間10年以下:給付金額の総額に60/100を乗じたもの
・残存期間15年以下:給付金額の総額に50/100を乗じたもの
・残存期間25年以下:給付金額の総額に40/100を乗じたもの
・残存期間35年以下:給付金額の総額に30/100を乗じたもの
・残存期間35年超:給付金額の総額に20/100を乗じたもの
一方、年金については、所得税法施行令により、雑所得として、つぎの算式により所得税が課税される。
・年金額-年金年額×既払込正味保険料総額/年金支給総額
最高裁判決は、相続税課税後のこうした年金への課税は、所得税法第9条第1項第15号(相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するものには、所得税を課さないとするいわゆる二重課税禁止規定)に反するとしたものである。
一方、相続税法第24条は改正されており(2010年4月1日施行、ただし3月31日以前の契約については2011年3月31日までに年金の給付事由が発生した場合に限り旧規定を適用)、定期金に関する権利の評価金額は、
・解約返戻金相当額、定期金に代えて一時金の給付を受けることができる場合には、当該一時金相当額、予定利率等を基に算出した金額のいずれか多い金額
となっている。
すなわち、残存期間に応じた権利の評価金額の軽減が廃止されており、判決のケースでは「定期金に代えて一時金の給付を受けることができる場合」として、当該一時金相当額について課税されることとなる。
今後、年金払い型死亡保障保険については、顧客・生保会社にとって、
・相続時の課税の変更(権利の評価金額の軽減廃止)
・相続税が課税された後に支払われる年金についての課税の廃止
といった多大な影響が生じるものと想定され、今後の動向等について、引き続き注視していきたい。
小林 雅史
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