コラム
2010年06月09日

菅新内閣の課題

櫨(はじ) 浩一

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1.菅内閣発足

鳩山前総理大臣の辞任を受けて6月4日に選出された菅新総理は昨日組閣を終え、菅内閣が正式に発足した。11閣僚が再任、野田財務大臣と山田農林水産大臣は副大臣からの昇格で、菅新総理自身もそうだし仙谷官房長官も鳩山内閣の重要閣僚だった。総理大臣が交代したとは言うものの新内閣は前内閣からの継続性が強く、政策が大きく変更されるということはないはずだ。

新内閣がまず行うべきことは、前政権のやり残した課題への対応と、7月に予定されている参議院議員選挙で昨年の衆議院選挙の際に掲げたマニフェストを見直すことだろう。

2.前政権のやり残した課題

前政権時代にやり残した課題の中では、口蹄疫問題への対応は緊急を要する問題だし、沖縄の基地問題も鳩山前総理が辞任して解決する問題ではなく、解決に向けた継続的な取組が求められる。6月を目途に進められてきた、成長戦略や中期財政フレームを取りまとめることも差し迫った課題である。財政問題を考えれば、鳩山前総理が行わないと言った消費税率の引き上げの問題も正面から議論せざるを得ない。

さて、こうした問題の陰に隠れてあまり取り上げられることが無くなってしまったが、政権交代で期待されていたのは年金記録の問題をはじめとした社会保障制度の改革だったはずだ。どうやって安定した年金制度を確立するのか、崩壊寸前といわれる救急医療体制をどう再構築するのか、介護難民・保育所難民とも呼ばれる人達にどうやってサービスを提供していくかなど、やり残した課題は山積している。

3.求められるマニフェストの見直し

与党民主党の田中真紀子議員はこの内閣の性格を選挙管理内閣と喝破したと伝えられているが、参議院選挙に向けて求められているのは、何と言ってもマニフェストの見直しだろう。

2010年度予算の編成作業の中で、衆議院選挙で掲げられたマニフェストは様々な問題を抱えていることが明らかとなった。半額の1万3000円の支給が先日はじまったばかりの子ども手当ても、2011年度から2万6000円の全額を支給する財源の目途が立たない。高速道路料金の無料化、農業の戸別所得補償も、最終的には政策を実現するための負担との兼ね合いで、このままの形で実施すべきなのか、形を変えるべきなのか、諦めざるを得ないのか、再検討されるべきだ。

短命内閣に終わるか長期政権になるのかは、7月に予定されている参議院選挙で国民の信任を得られるかどうかにかかっている。マニフェストの見直しは、そのカギを握っていると言えるだろう。
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