2010年05月24日

新しい保険法の時代のはじまり

  猪ノ口 勝徳

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保険契約の締結から終了までの一般的なルールを定める保険法が今年の4月に施行された。今まで商法に置かれていた規定の約100年ぶりの大改正である。近年、保険事業は大きな変貌を遂げている。たとえば、いわゆる第三分野といわれる傷害疾病保険が広く普及している。また、民間の保険会社とは別に、各種の共済が存在感を増してきている。このような情勢を踏まえ、片仮名・文語体の商法を改め、現代社会に合った保険法が制定、施行されたものである。
今回の見直しの大きな特徴は、保険契約者等の保護のための規定が整備された点にある。たとえば、保険加入時の告知制度に関する規定が見直され、保険金支払時期に関する規定が新設された。前者の告知制度は、保険に加入するときに、保険会社が告知を求めた事項について、保険契約者、被保険者が応える義務をもつものとして定められたものである。公平・公正な保険制度運営のために設けられた制度であり、保険契約者等が故意または重大な過失により告知義務に違反した場合には、保険会社は保険契約を解除することができる。これについて、保険法では、募集人等の保険媒介者が保険契約者等の告知を妨害した場合などは、保険会社は告知義務違反による解除ができないことと定めた。また、後者の保険金支払時期については、保険金を支払うために必要な事項の確認を相当な期間内で行い、その期間を経過した場合は保険会社が延滞の責任を負うこととされた。これらはいずれも、保険契約者等の保護を目的とした規定である。
一方で保険制度の健全性確保の観点から規定されたものもある。具体的には重大事由による解除を挙げることができる。これは、保険契約者等が死亡保険金取得目的で被保険者を殺害しようとした場合や、保険金の請求に詐欺があった場合等の重大事由を引き起こした場合に、保険会社は保険契約を解除できるとの規定である。生命保険契約の約款では従来からあった規定であるが、今般、保険法の中で規定されることとなった。保険制度にモラルリスクが混入することを防ぎ、保険制度の健全性を確保することを目的とした規定である。
多くの人が利用する保険制度においては、保険契約者等の保護と制度の健全性確保がなによりも重要である。この意味で、保険法が果たす役割は大きい。さらに、経済・社会の発展に伴い、従来の保険とは異なるが保険と類似の機能を持つものが出現するようになってきている。たとえば、金融商品では、さまざまな保証機能が開発、導入されている。一昨年の世界的な金融危機で有名になったCDS(クレジットデフォルトスワップ)も、その一種と言えよう。現代社会において多様なリスクに備えるために、従来の保険機能だけでなく保険類似機能の重要性が高まってきている中で、契約者保護、制度の健全性確保という保険法の考え方が、保険法施行を契機に広く定着することが望まれる。

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