2010年04月26日

高齢者の社会的孤立について

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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■目次

はじめに~拡がる社会的孤立
1――高齢者の社会的孤立の背景
2――高齢者の社会的孤立の状況
3――孤立しない社会に向けて
おわりに~ジェロントロジー的“孤立社会からの脱却”

■introduction

今年1月31日、NHKスペシャル「無縁社会・日本」という番組が放送され、「誰にも知られず、引き取り手もないまま亡くなっていく」“無縁死”の姿が紹介された。同番組のホームページでは、『日本が急速に「無縁社会」ともいえる絆を失ってしまった社会に変わっている実態が浮き彫りになってきた』としている。高齢者がますます長寿になる中で、一人暮らしが増加し、大都市近郊の団地などでは多くの孤立(孤独)死報道もされている。また、グループホームなどケア付き住宅で過ごす要介護高齢者が避難の遅れから火災で亡くなる事故も後を絶たない。長寿社会のQOL(生活の質)は、寿命の伸長とともに高齢者がどのような最期を迎えることができる社会なのかを問うている。高齢化とともに募る健康不安や社会からの孤立は、誰もがごく普通に望む幸せな最期を迎えることを困難にしており、その背景には人々のつながりが薄れる日本社会の現実がうかがえる。
今日では非正規雇用が増加し、職場でのつながり「職縁」も薄くなっている。そして、非正規雇用の不安定な経済基盤のために「結婚したくても結婚できない」若者が増加し、大きな少子化の要因と考えられている。また、発展したIT社会の負の側面として現実の人間関係を忌避して引きこもる若者がいたり、ネットカフェ難民という言葉も聞かれる。企業では行き過ぎた成果主義が勤労者の職場内での孤立を深め、メンタルヘルスの深刻化や経済的動機による40代、50代男性の自殺をもたらしている。最近では中高年サラリーマンがリーマンショック以降の世界経済不況の直撃を受け、リストラから家庭崩壊、離婚が起こり、単身化するという事態も発生している。一方、家庭で子育てをする母親が社会から孤立して子育て不安が増幅し、育児ノイローゼなどから児童虐待につながるケースもある。
このようにつながりが薄れた日本社会が直面し始めた社会的孤立状況は世代にかかわらず拡大し、その解消はわが国の少子高齢化・人口減少時代の極めて深刻な課題になっている。本レポートではまず社会的孤立の中でも特に高齢者の社会的孤立に焦点を当て、その背景となっている世帯構造の変化や希薄化するコミュニティの現状から「一人暮らし」高齢者の孤立する生活実態を明らかにし、孤立社会から脱却するための解決策について考えるものである。

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

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