コラム
2010年04月16日

消費税と世代間格差

  遅澤 秀一

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最近、消費税増税の議論が高まりつつある。だが、どの党も将来の消費税増税を検討する段階であり、具体的な話にはなっていないようだ。消費税値上げ反対派の声が強く、値上げ幅や時期などを議論すること自体がはばかられる風潮があったことを思えば、状況は変化しているようにも思える。財源なきばらまきを続ければ財政赤字が増大し、結局、将来世代の負担になることは明らかだからだ。

日本の税制を欧米諸国と比較すると、法人税の実効税率が高いのに消費税が突出して低いという特徴がある。消費税率を低く抑える最大の弊害は、大きな政府か小さな政府かの議論を隠蔽してしまい、負担を後の世代に先送りしてしまうことにある。というのは、消費税増税の話を持ち出すと、所得税の最高税率を上げろとか大企業からもっと法人税をとれとか言い出す人間が必ず出て、そこで議論が止まってしまうことが多いからである。現在でも、税金の無駄使いをなくすことが先だという順番論も根強い。日本が政府の介入を否定するアナルコ・キャピタリズム(無政府資本主義)になるまで待てとでも言うのだろうか。

さて、消費税に関する既得権を考えるため、トータルで税収に対して中立的にするという前提の下で、所得税・法人税を引き下げ、消費税を上げると仮定しよう。この場合、消費税は逆進性が強いので低所得層にとって重い負担になるという反対論が噴出しそうだ。

だが、逆進性については、高齢者と現役世代とに分けて考える必要がある。失われた20年間に現役世代の所得が低下する一方で、高齢者はデフレによる実質購買力上昇の恩恵を受け、意図せざる超過利潤を得た。そこで、名目福祉水準を維持し、消費税増税、所得税・法人税減税を行えば、その超過利潤が可処分所得として高齢者から現役世代へと移転することになる。これは世代間格差是正の点で望ましいだろう。また、現役世代に関して言えば、もっとも弱い立場にあるのは失業者や雇用が不安定な人達である。法人税減税によって空洞化圧力が弱まれば、雇用面で好影響を受けるだろう。さらに、減税効果が消費拡大や株価上昇等に及べば、本当の弱者も間接的に恩恵を受けることになるはずだ。

ここでの最大のポイントは、高齢者福祉の名目水準を維持することである。当然のことながら、実質的には切り下げられることになる。従来、後の世代にツケをまわしていた部分を高齢者に負担してもらうことになるからだ。だが、政治力の強い高齢者が福祉水準の実質的維持を求めたら、消費税値上げの意義は大幅に薄れることになるだろう。規制業種を除けば、現役世代の所得は国際競争力を維持できる水準に収斂するので、結局、現役世代が負担することになるからである。このように、消費税値上げは世代間格差是正の問題でもあるのだ。消費税を単なる逆進性の問題として扱ってはならない。

遅澤 秀一

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