2010年04月14日

わが国におけるゼロ金利下の非伝統的金融政策の効果に関する実証分析:資産価格の役割

  竹田 陽介
経済研究部 チーフエコノミスト   矢嶋 康次

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わが国をはじめ,米国・英国・欧州通貨同盟諸国において採用された「非伝統的金融政策」は,中央銀行のバランスシートに信用リスクを発生させると同時に,中央銀行の「最後の買い手」機能,金融システムの「マクロ・プルーデンス」に正当性を与えつつある.なかでも,早い時期から断続的にゼロ金利政策及び量的緩和政策を実施してきた日本銀行は,バランスシート運営の基本的な考え方として,資産として満たすべき「健全性」,「流動性」,「中立性」の条件を示している.本研究は,非伝統的金融政策に関する枠組みにおける資産価格の役割に着目しながら,わが国における非伝統的金融政策の効果について実証的に明らかにすることを目的とする.具体的には,名目金利のゼロ制約を加味した非線型のテイラー・ルールに,内生変数である資産価格を組み込み,トービット・モデルにより推定する.そこでは,資産価格の決定要因と考えられる非伝統的金融政策が,金融政策ルールを識別するための操作変数として用いられる.推定の結果,以下が示される.

1) CP等買切オペ,社債買切オペの増額,日本銀行のバランスシートにおけるCP等・社債の比率の上昇は,短期の信用スプレッドを中心にして一様な効果をもたらした反面,株式などの金銭の信託の比率の上昇は,直接的に日経平均及びTOPIXの上昇に?がった.これまでの日本銀行の非伝統的金融政策は,中立性の観点からは,不十分な効果しかもってこなかった.

2) 国債買切は,TOPIXを低下させ,CP等及び社債買切の増額は,高格付債券の信用リスクのみを低下させ,信用スプレッドの拡大をもたらした.流動性の観点からは,望ましい効果を発揮して来なかった.

3) 株式などの金銭の信託やCP等のバランスシートの比率の上昇は,株価を引き上げ,中短期を中心にした信用スプレッドの縮小が見られた反面,社債の比重の上昇は,短期の信用スプレッドは拡大し,信用リスクの高まりを生んだ.健全性の観点からも,不完全な効果しかもたらさなかった.

  

竹田 陽介

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経済研究部

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

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