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親方日の丸企業の代表である日本航空(JAL)が2010年1月19日に会社更生法適用を申請し、事実上経営破綻した。100%減資の株式は2月20日で上場廃止になった。また少数派であろうが、12年前の発行時に170億円の社債(当時の格付けはAA-格と高水準) を取得し、3月5日の償還を心待ちにしていた投資家には、「まさかJALがこんな事態になるなんて」と痛恨の一事だろう。社債への投資は、国債より少しでも利回りを上乗せして稼ぐことが目的であるが、毎年いくら利息を積み上げたとしても、最後の最後に信用リスクが表面化し元本を毀損させては、元も子もなくなる。JAL社債は5本合計で672億円の残高だが、元本が大幅にカットされ、いずれ返済の方向にある。
政府支援を受ける企業の社債がデフォルト(債務不履行)になるのは、わが国で初めてのことであるが、金融システム全体に影響を及ぼす銀行を除き、米国のゼネラル・モーターズのように巨大な事業会社でも破綻があり得る、つまり「ツービッグ・ツーフェイル(too big to fail、大き過ぎてつぶせない)」神話崩壊との時代認識に立てば、このJAL破綻は絶好のケース・スタディになると思われる。
ファンドマネジャーの意思決定は、顧客と運用会社自身の基本方針(運用ルール)に従って行われる。社債については、「取得後に格付機関による格付けがいずれもA格未満となった場合には、信用リスクに十分留意の上、適切な措置を講じる」という趣旨の記述が多いが、いざ実行するとなると至難の技である。
JAL社債は、日本格付研究所(JCR)のBBB-を除けば、他の格付機関では既にBB+以下と投資不適格になって久しいが、最後まで保有していたファンドマネジャーは、償還に賭けても適切な措置だと判断したのかもしれない。JALの生殺与奪の権を握っていると思われた関係閣僚の発言も、わずかの間に自力再生、私的整理、法的整理と変化が著しかっただけに、適切な対応が容易でないことが想像される。
しかし結果論だが、100年に1度の世界的な金融危機の片棒を担いだのではないかと評判を落とした格付機関の格付けを尊重すればよかったのである。最後の砦JCRによるBBB-格を格下げ方向で見直すとの発表は2009年5月13日で、実際の格下げは9月25日だったが、そのいずれの時点でも売却しておれば、処理方法が二転三転した時期の水準より売却損を抑えられた可能性が高い。
ファンドマネジャーの果たすべき受託者責任は、結果でなく、そのプロセスが問われるものである。長期保有していればいるほど、損切りは難しいと思われるが、大切なのは、過去よりも、将来の見通しであり、常に思慮深い運用を心がけたいものである。
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萩尾 博信
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