2010年01月29日

鉱工業生産09年12月~堅調維持も先行きは減速の公算

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・3四半期連続の増産
・1-3月期も増産見込みだが勢いは鈍化の公算

■introduction

経済産業省が1月29日に公表した鉱工業指数によると、09年12月の鉱工業生産指数は前月比2.2%と10ヵ月連続で上昇したが、事前の市場予想(ロイター集計:前月比2.5%、当社予想は同2.8%)は若干下回った。出荷指数は前月比1.1%と10ヵ月連続の上昇、在庫指数は前月比0.0%の横ばいだった。
12月の生産を業種別に見ると、設備投資の下げ止まりを反映し、一般機械が前月比6.1%の高い伸びとなったほか、2ヵ月連続で低下していた電子部品・デバイスも前月比6.5%の高い伸びとなった。一方、生産の牽引役となっていた輸送機械は前月比▲2.9%と10ヵ月ぶりに低下した。速報段階で公表される16業種中、11業種が前月比で上昇、5業種が低下となった。
なお、鉱工業生産指数の09年3月からの12月までの累積の上昇率は29.4%となり、前回の景気後退局面における落ち込み幅(08年2月~09年2月)の半分を10ヵ月で取り戻す形となった。
10-12月期の生産は前期比4.6%と3四半期連続の上昇となった。7-9月期の前期比7.4%からは伸びが鈍化したものの、在庫調整の進展、好調な輸出を背景に引き続き高めの伸びとなった。業種別には、国内外で自動車買い換え促進策が実施されている効果から、国内販売、輸出ともに好調な輸送機械が前期比10.1%と3四半期連続で二桁の高い伸びとなったほか、回復が遅れていた一般機械は設備投資の下げ止まりを反映し、前期比16.1%と伸びが急加速した(7-9月期:同6.3%)。一方、在庫調整の進展から高い伸びが続いていた電子部品・デバイスは、前期比4.8%(7-9月期は同13.2%)と伸びが低下した。
在庫循環図を確認すると、08年10-12月期から09年7-9月期までは「在庫調整局面」に位置していたが、10-12月期は「意図せざる在庫減少局面」へと移行した。出荷の減少幅が7-9月期の前年比▲19.3%から同▲4.1%へと大きく縮小する一方、在庫の減少幅が7-9月期(末)の前年比▲12.1%から同▲14.6%へと拡大し、在庫の減少幅が出荷の減少幅を上回った。製造業の製品在庫に関しては、在庫調整局面は終了したと見てよいだろう。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)は7-9月期に前期比5.3%と8四半期ぶりの増加となった後、10-12月期は同11.4%と伸びが加速した。一方、設備投資のうち建設投資の一致指標である建設財出荷は7-9月期は前期比2.6%の増加となったが、10-12月期は同▲1.7%と再び減少に転じた。
消費財出荷指数は7-9月期の前期比7.4%の後、10-12月期は同4.6%となり、3四半期連続で増加した。非耐久消費財は前期比▲1.9%と弱めの動きとなったが、エコカー減税・補助金、エコポイント制度といった政策効果から耐久消費財が7-9月期の前期比15.1%の後、10-12月期も同10.5%と高い伸びを続けた。鉱工業指数に含まれない外食、旅行などのサービス消費は雇用・所得環境の悪化を背景に弱い動きとなっているが、自動車、テレビなどの耐久消費財の高い伸びがそれをカバーする形が続いている。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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