コラム
2010年01月25日

「同時改定」は医療・介護再生の“万能薬”ではない

  阿部 崇

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昨年末、今年4月からの医療技術の単価(診療報酬)の改定について、久しぶりのプラス改定(単価の引上げ)が決まった。もっとも、これは医療保険からの給付の総額についての数字なので、現在議論されている個別の単価設定によっては、上がるものもあれば、下がるものもあるのだが。
   「“コンクリート”から人へ」というキャッチフレーズの下で、診療報酬のプラス改定はその象徴とも評価されたが、その一方で、他の省が“鉄”の塊に多額の税金を注ぎ込むことを決定したことには、疑問を持つ国民も少なくないであろう。

さて、2年後の2012年に予定される診療報酬と介護報酬の同時改定に向け(同時改定の仕組みは、拙稿「医療は2年、介護は3年」参照)、今月半ば、厚生労働大臣から「医療と介護の話を合わせて1つの会議体でできないか、検討している」との発言があった。その背景には、3年毎に行われる介護報酬改定が昨年4月に済み、今年4月の診療報酬改定も山場を越え、当面の医療・介護政策の議論が「2012年の同時改定」というキーワードで進められている という事情がある。

確かに、制度や報酬の仕組みが壁となってうまく連携が図れない部分が多いと言われている医療・介護の現場にとって、共通の目的に向かって同じタイミングで両制度・報酬の調整が行われることは、何らかの期待を感じさせるのだろう。このまま行けば、「病院が介護事業者に退院患者の情報を提供したら○○点(診療報酬)、介護事業者が日常のケアの様子を主治医に文書で報告したら□□単位(介護報酬)」くらいは実現されるかもしれない。

しかし、それは、患者・利用者にとって、そして、医療と介護の現場にとって、現状を快方に向かわせる“万能薬”となるのであろうか。次の入院患者が待っている中で、退院患者の在宅介護にどれだけ人と時間を充てられるのか、次の訪問宅に急いで向かわなければならない中で、主治医への報告の文書を何枚書くことができるのか。連携が図れない原因はもっと根深いのである。

診療報酬と介護報酬の垣根を取り払い、1つの会議体で同時改定にあたることは、当面の“鎮痛薬”にはなるかもしれない。初めての試みでもあった“事業仕分け”は「結論はともかく、議論が可視化されたことは一歩前進」との評価もあったが、これから2年間の同時改定の議論は「結論」が求められている。

同時改定は両制度再生の“万能薬”ではなく、医療と介護の制度そのものを人口構造や時の経済情勢に振り回されないよう“体質改善”させることこそが急務である。少なくともその方向性を示すことが、同時改定の「結論」なのであろう。(体質改善の提案は、拙稿「医療は“都道府県”に、介護は“市町村”に ~医療・介護の地域保険構想~」参照)

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