コラム
2009年12月24日

世帯構造変化とコミュニティ~「ひとり社会」の処方箋

土堤内 昭雄

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日本は急速に少子高齢化が進展し、本格的な人口減少時代を迎えている。このような人口構造の変化とともに、わが国の社会経済に大きな影響を与えるのが世帯構造の変化だ。先日、国立社会保障・人口問題研究所が2005(平成17)~2030(平成42)年の25年間の5年ごとの都道府県別世帯数の将来推計値(2009年12月推計)を公表した。それによると一般世帯総数は2015年にピークを迎え、以降、減少することになる。

これまで人口減少下においても一般世帯総数が増加してきたのは、平均世帯人員が減少してきたからに他ならない。今回の推計では2030年には2.27人(2005年は2.56人)となり、東京都ではついに2人未満(1.97人)となる。

家族類型別世帯数をみると、「夫婦と子から成る世帯」は減少し、2020年以降はすべての都道府県で一人暮らしである「単独世帯」が最多となる。これはこれまで日本の世帯が核家族を中心としてきたことから考えると極めて大きな構造変化だ。つまり家族の基礎単位と考えられてきた「核家族(Nuclear Family)」はさらに細分化され、家族を一般的に二人以上で構成される共同体として想起すると、家族の将来像はその概念から大きくかけ離れた姿へと変容しつつあるのだ。

このように単独世帯が主要な家族類型になると、これまで家族が担ってきた社会的機能にも多大な影響が生じる。わが国では2000年に公的介護保険が導入され、介護の社会化が進んでいるが、それは家族が果たす介護機能を完全に放棄するものではない。また、共働き世帯が増加し、子育ての社会化も始まっているが、これも家族が有するすべての育児機能に替わることにはならない。しかし、様々な家族機能が縮小することは間違いなく、それをどのように補完するかが今後の大きな課題となろう。

家族機能を社会制度がすべて代替することは不可能であり、それに替わることが期待されるのがコミュニティ機能だろう。単独世帯が中心となった「ひとり社会」では、コミュニティというインフォーマルな共同体が家族機能を補完することが求められる。

今後、団塊世代が大量に退職し、会社という帰属社会を失ったとき、引きこもりや孤独死といった社会的孤立が顕在化するかもしれない。そのような社会的孤立を防ぐためには、仕事以外の暮らしの中で、様々な人や地域とのつながりが不可欠となり、われわれ自身にはこれまで以上にコミュニティにおけるコミュニケーション能力の涵養が求められる。そして「ひとり社会」では家族機能の縮小に替わる新たな社会制度の創出とそれを補完するコミュニティ機能醸成の仕組みづくりが必要になる。
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