2009年11月25日

米国生保の支払能力規制 -原則主義アプローチ採用による改革で指導的立場を保持しうるか-

  荻原 邦男

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米国サブプライムローンに端を発した金融危機の経験を踏まえ、金融機関の監督規制の見直し議論が進んでいる。英米が見直し案の構築を競っている背景には、ある種のスタンダードで主導権を握ることが、今後の自国の競争力強化に繋がると見ているからである。
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保険会社の支払能力規制についても同様のことが言えるようである。支払能力規制の改革(ソルベンシーⅡと呼ばれる)を進めるEUに対し、最大の保険大国であり、わが国が支払能力規制の面で範としてきた米国はどのように対応していくのだろうか。本稿は、米国生保の支払能力規制改革への取組の状況をまとめるとともに、EUの取組との比較を通じて、その競争力をサーベイしようとするものである。
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米国では、最低保証のある変額年金をはじめとした商品の多様化・複雑化を受けて、従来の単一の計算式による責任準備金評価やリスク額評価では限界があることが判明してきた。これを受けて、米国生保は「原則主義アプローチ」に基づく、責任準備金評価やリスク額評価の改革を進めてきた(2005年決算から変額年金のリスク評価、2009年からは変額年金の責任準備金に適用)。さらに2012年頃を目途に一般の個人保険に拡大し、新たな責任準備金評価を導入する予定である。
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多数のシナリオによる将来シミュレーションをもとに、確率論的に責任準備金やリスク評価額を求める手法は、リスク評価の精度を上げる効果が期待される一方で、監査可能性の低下や比較可能性の保持の点に課題があるとされている。
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いずれも2012年頃に開始が予想されるEUソルベンシーⅡと米国の支払能力規制を比較すると、EUは新たに作り直したため、全体の整合性の点では一日の長があるように見える。一方で、カナダも米国と類似の制度を持っており、北米グループ方式として存在し続けるものと考えられる。
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今後のわが国の責任準備金評価や支払能力規制を考えると、EU方式の採用もありうるが、単体決算として従来の米国準拠の方式を残す選択肢もありうるだろう。米国は今後ともわが国にとって影響力があり、米国の支払能力規制を引き続き注視する必要があるものと考えられる。

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