2009年10月29日

鉱工業生産09年9月~着実な増産が続く

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・7-9月期の生産は前期比7.2%
・10-12月期も増産が維持される見込み

■introduction

経済産業省が10月29日に公表した鉱工業指数によると、9月の鉱工業生産指数は前月比1.4%と7ヵ月連続で上昇し、事前の市場予想(ロイター集計:前月比1.0%、当社予想は同0.6%)を上回った。出荷指数は前月比3.4%と7ヵ月連続の上昇となり、生産の伸びを大きく上回った。8月に8ヵ月ぶりに上昇に転じた在庫指数は前月比▲0.5%と再び低下し、在庫率指数は前月比▲4.7%と大きく低下した。

9月の生産を業種別に見ると、輸出の持ち直しを背景に輸送機械が前月比8.2%となったほか、在庫調整が大きく進展した情報通信機械が前月比7.3%、電子部品・デバイスが同5.0%の高い伸びとなった。速報段階で公表される16業種中、12業種が前月比で上昇、3業種が低下(1業種が横ばい)となった。

7-9月期の生産は前期比7.2%と2四半期連続の上昇となった(4-6月期は同8.3%)。業種別には、鉄鋼、輸送機械、電子部品・デバイスがそれぞれ前期比24.7%、20.4%、13.1%の高い伸びとなり、7-9月期の生産増の8割近くがこの3業種によるものであった。また、設備投資の低迷を背景に急速な落ち込みが続いていた一般機械も前期比5.9%の増加となるなど、増産の動きは裾野の広がりを伴ったものとなりつつある。

7-9月期の在庫循環図を確認すると、引き続き「在庫調整局面」に位置しているが、4-6月期に比べると在庫調整終了を意味する45度線に近づいた。出荷の減少幅が4-6月期の前年比▲27.6%から同▲19.5%へと縮小する一方、在庫の減少幅が4-6月期の前年比▲10.3%から。同▲12.2%へと拡大した。

財別の出荷動向を見ると、設備投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)は4-6月期に前期比▲17.0%と急速に落ち込んだ後、7-9月期は同5.2%と8四半期ぶりの増加となった。GDP統計の設備投資は4-6月期には前期比▲4.8%の大幅減少となったが、7-9月期は減少幅が大きく縮小することが見込まれる。

一方、消費財出荷指数は4-6月期の前期比9.9%の後、7-9月期は同7.1%となった。特に、好調な自動車販売を反映し、耐久消費財が4-6月期の前期比15.2%に続き7-9月期も同15.1%と高い伸びを維持した。鉱工業指数に含まれない外食などのサービス消費は、雇用・所得環境の悪化を背景に弱めの動きとなっているが、エコカー減税などの政策効果に支えられて、7-9月期の民間消費(GDP統計)は4-6月期の前期比0.7%に続き、明確な増加となる可能性が高いだろう。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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