2009年09月30日

鉱工業生産09年8月~在庫調整が足踏み

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

文字サイズ

■見出し

・生産は6ヵ月連続の上昇
・7-9月期は2四半期連続の増産だが、4-6月期の伸びを下回る公算

■introduction

経済産業省が9月30日に公表した鉱工業指数によると、8月の鉱工業生産指数は前月比1.8%と6ヵ月連続で上昇し、ほぼ事前の市場予想(ロイター集計:前月比1.9%、当社予想は同2.4%)通りの結果となった。出荷指数は前月比1.0%と6ヵ月連続の上昇となった。鉱工業生産は4月、5月には前月比で5%台の高い伸びとなったが、6月以降は2%前後の伸びとなっており、回復ペースはやや鈍化している。
在庫指数は1月以降、7ヵ月連続で低下していたが、8月は前月比0.0%の横ばいとなった。在庫調整が大きく進展してきたことは確かだが、出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は依然マイナスであり、在庫率指数も高止まりしている。この段階で在庫が増加に転じることは、生産の抑制要因となる可能性がある。来月以降の在庫の動きが注目される。
8月の生産を業種別に見ると、輸出の持ち直しを背景に鉄鋼が前月比8.4%、輸送機械が同2.2%となったほか、在庫調整が大きく進展した情報通信機械が前月比5.9%、電子部品・デバイスが同3.3%となった。速報段階で公表される16業種中、13業種が前月比で上昇、2業種が低下(1業種が横ばい)となった。
財別の出荷動向を見ると、設備投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)は4-6月期に前期比▲17.0%と急速に落ち込んだ後、7月が前月比▲1.8%、8月が同6.9%となった。7、8月の平均は4-6月期よりも1.9%高い水準となっている。GDP統計の設備投資は4-6月期の前期比▲4.8%に続き7-9月期も低調な動きが予想されるが、減少幅は縮小することが見込まれる。
一方、消費財出荷指数は4-6月期の前期比9.9%の後、7月、8月ともに前月比2.2%となり、7、8月の平均は4-6月期よりも6.8%高い水準となっている。ただし、鉱工業指数には含まれない旅行、外食などのサービス消費は、雇用・所得環境の悪化を背景にこのところ弱めの動きとなっている。エコカー減税・補助金、エコポイント制度といった政策効果に支えられて、4-6月期の民間消費(GDP統計)は前期比0.7%と3四半期ぶりの増加となったが、7-9月期は伸びが大きく鈍化する可能性が高いだろう。

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【鉱工業生産09年8月~在庫調整が足踏み】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

鉱工業生産09年8月~在庫調整が足踏みのレポート Topへ