コラム
2009年09月09日

早期英語教育を考える上での視点について

保険研究部 兼 経済研究部 主席研究員 アジア部長 General Manager for Asia   平賀 富一

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先日、興味深いコラムを読んだ(7月31日付NNA「テイクオフ」)。そのポイントは、韓国で小中学生の英語学習を目的とする留学が急増しており、夏休みの一時帰国の際に、外国生活でのストレスによる不具合の治療にクリニックに通う例が多く見られるというものであった。

このことに関して、最近、アジア各国への出張時に、「韓国人の英語学習のための留学熱(「英語熱風」と称される由)が非常に高まっており、経済的に余裕のある家庭の子供は、欧米、カナダ、オーストラリアへ、次いでシンガポール、マレーシア、インド、フィリピン等へ向かう例が多い」との話題に接することが多い。また「留学する子供に母親が同行するため、父親が単身、ソウルなど韓国国内に残って働き、学費や生活費を仕送りしているケースが多い」とも聞く。

韓国は、わが国以上に競争社会化、格差社会化、少子化が進んでいると言われ、そういった環境の下で、高学歴やレベルの高い英語力を身につけることが一流企業への就職など社会の中でより有利なポジションに就けるとの期待から上記のような状況が生じているものと思われる。

他方、別の観点から、小中学生のような若年者の留学生が増えることは国のあり方にどのような影響を与えるのだろうかという疑問も残る。筆者の経験でも、著名企業の幹部社員である韓国人二人-いずれも子供時代から10数年を米国で過ごして「帰国」した-が、英語の方が母国語である韓国語よりも堪能であり、物事を発想する場合には先ず英語で考えると語り合っていたのを思い出す。英語でのビジネスに長年苦労している筆者から見れば、ネイティブ・スピーカーの水準で英語を駆使できる彼らを実にうらやましいと思う反面、韓国人としてのアイデンティティは余り感じられないとの印象を受けた。

わが国でも早い段階からの英語教育のあり方についての官民での議論が続いている。確かに、今回例に挙げた韓国をはじめとするアジアの諸国を含めた各国が従来以上に英語教育に注力しレベルアップを図ってきている中、国や企業の競争力を高め、また相互理解を深める上で使える英語力を涵養する事の重要性は言うまでもない。同時に、国際人として認められ尊敬されるには、自分の国の歴史・文化・言葉をきちんと習得していることが必要とされる。

日本語教育と英語教育は二者択一のものではなく、両者のバランスが重要であるが、早期の英語教育を考える際には、日本のことを良く知り、日本人としてのアイデンティティをしっかりもった人間を育てるという視点を大切にしたいと思う。

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保険研究部   兼 経済研究部 主席研究員 アジア部長 General Manager for Asia

平賀 富一 (ひらが とみかず)

研究・専門分野
国際経営・国際経済(アジア地域を主とする)・国際人的資源管理

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