コラム
2009年09月02日

消費者庁設置を契機に目指すべき「顧客視点」経営

生活研究部 シニアマーケティングリサーチャー   井上 智紀

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9月1日、「消費者庁」ならびに消費者行政全体を監視する「消費者委員会」が設置された。消費者行政を一元的に担う新たな組織がどのように機能していくのか、今後の動向に注視していく必要はあるが、地方自治体の消費生活センター等、現場の機能強化が図られることで、消費者の相談窓口が一元化されるだけでなく、トラブルがあった際の迅速な対応が期待できるなど、「消費生活における有事」の際の利便性が向上することは、一消費者として喜ばしい限りである。

多様な商品・サービスが溢れる中、無用のトラブルを生じないためには、消費者側にも正しい知識を身につけるとともに、一部の悪意ある事業者からの甘言に弄されることのない冷静な態度が求められる。

一方、いわゆるBtoCのビジネスに携わる企業にとっては、従前にも増して消費者対応に注力する必要があろう。「顧客志向」の経営の重要性については、旧くから言われているが、「顧客志向」=「消費者のニーズを汲みとった商品・サービス」を提供すればよい、と考えられがちであり、このような姿勢はトラブルの種にもなってきたのではないだろうか。多様な消費者ニーズに対応するため多機能化を推し進めることで利便性は高まったかもしれないが、使ったことのない機能ばかりのTVや携帯電話など、操作に不安を感じた消費者も多いだろう。また、数年前の保険の不払い問題では、多様な消費者ニーズに応えることを重視するあまり売り手側ですら把握しきれないほどの特約が付加されたことが原因の一角を占めていたことも記憶に新しいところである。

翻って消費者側の視点にたってみれば、本来目指すべきところは、「消費者のニーズを汲みとった商品やサービス」の提供、ではなく、「消費者が抱える課題を解決する最適なソリューション」の提供であろう。消費者は、「保険」や「年金」ではなく、「将来の経済的不安を解消できるもの」を提供してくれる会社に大事な資金を託すのである。

消費者・生活者視点の行政組織が発足することにより、国・地方における消費者行政がどの程度変わっていくのか、今後の動向には注視が必要ではあるが、企業にとっては、「顧客志向」をさらに進め、「顧客視点」に立って顧客接点を初めとした経営全般の見直しを進める契機と捉えるべきなのではないだろうか。

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生活研究部   シニアマーケティングリサーチャー

井上 智紀 (いのうえ ともき)

研究・専門分野
消費者行動、金融マーケティング、ダイレクトマーケティング、少子高齢社会、社会保障

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