2009年08月26日

景気後退下の米国生保業界 -米国生保市場のトレンドは変化したか-

保険研究部 主任研究員   松岡 博司

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米国生保市場は世界最大の生保マーケットである。90年代初頭からソルベンシー危機や不正販売危機に見舞われたが、90年代後半以降は、米国経済の成長と株式市況の活況、投資ブーム等を受け、持続的・安定的な成長を続けてきた。しかし、今般の金融危機と、それに続く景気後退の下、米国生保を取り巻く環境は様変わりした。米国生保業界が、景気後退を一時的な停滞期として乗り越え、再び安定的な成長軌道へ戻るのか、それとも新しいステージに入るのか、現在は、その分岐点にある。
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景気後退下、個人生命保険、個人年金の両分野で、米国生保の保険販売業績は落ち込みをみせている。
個人生命保険では、従来の牽引役であった変額ユニバーサル保険、ユニバーサル保険にかげりが見え、伝統的な生命保険商品である終身保険、定期保険に脚光があたってきている。
個人年金では、投資ブームの中で米国生保市場の成長をもたらしてきた変額年金の人気が衰え、定額年金の販売が増加している。変額年金は米国生保の成功を象徴する商品であったが、金融危機を境に、収益の圧迫要因、リスク要因と見られるようになっている。
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景気後退は、保有資産の価格低下による投資損失を発生させ、資産運用面に直接的な影響をもたらした。金融危機のさなかには、資本が減少した生保会社が資本市場の機能麻痺の中で、資本調達の困難に直面し流動性危機に陥るのではないかとの観測も出て、特に上場会社が苦しんだ。
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大統領の指示により行われている金融監督全般の見直しの中では、州が担当してきた保険監督に連邦がどのように関与するかが注目されていたが、6月に財務省が提出した報告書では、保険会社の状況をモニタリングする連邦機関を作るという案となっている。
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株価連動の変額年金や変額ユニバーサル保険を主力商品に、高い成長を遂げ、資本市場における好評価を得て資本調達を実施、M&Aでさらなる拡大を果たす、というエクイティ連動型の成長モデルは大きな分岐点にさしかかっている。一方、従来型の地道な生保経営が見直されている。新しい米国生保の経営軸が現れることが期待される。

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保険研究部   主任研究員

松岡 博司 (まつおか ひろし)

研究・専門分野
生保経営・生保制度(生保販売チャネル・バンカシュランス等、主に日本生命委託事項を中心とする研究)

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