コラム
2009年07月09日

収入保険料構成推移に見る米国生保の特徴

  小松原 章

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米国生保会社は中核事業である、(1)生命保険(life insurance)、(2)年金(annuities)、(3)医療保険(accident and health insurance)の3事業分野に加え、法令で認められたその他保険事業および付随業務を営んでいる。このような状況を反映し、生保の主要業績統計である収入保険料についても生命保険、年金、医療保険という大枠の分類で時系列的に把握されている。

米国生保の収入保険料の推移からその事業の特徴を探るために最も代表的なACLI(米国生保協会)のファクト・ブックに基づき長期的な変遷を以下の表のとおり抽出してみた。この表では統計のとれる1950年から20年おきに直近の2008年までの事業種類別占率推移が個人・団体合計ベースで示されている。

この表から理解できる特徴は、約60年間で、(1)生命保険が76%から23%へと大きくウェートを低下させている、(2)年金が12%から51%へと顕著な上昇を示している、(3)医療保険は変動が見られるものの、一定の存在感を見せている、等であると思われる。一般的に、米国生保業界というと終身保険等を主体とする伝統的な生命保険が中心的地位を占める業界であるとのイメージを抱く層も少なくないと思われるが、この間の劇的な変化を見ると従来の発想を改めざるを得ない一面もある。

ウェート低下が顕著な生命保険分野でも商品構成面では大きな変化が見られ、たとえば代表的な生保リサーチ機関であるリムラ(LIMRA)の統計によると、個人生命保険部門の商品構成変化を新契約年換算保険料ベースで見ると、1976年には88%を占めていた終身保険が2008年には23%までに低下している。これに対して1980年ころから急速に普及し始めたユニバーサル保険(保険料が保障部分、貯蓄部分等に分割され、保険料払い込み、保険金額設定に自在性がある商品)が統計に現れた1981年の2%から2008年には54%(変額含み)にまでウェートを高めている。発売当初の1980年代初頭においては中小規模生保先導で普及した後、これらに大手が追随する形で一般化・定着化した結果、今日では個人生保の中心的な役割を担うまでに成長した。

成長顕著な年金分野について見ると、当初は団体年金先行で成長した後、1980年代に入ると定額個人年金が成長を始め、さらに1990年代に入ると株式市場の堅調や積極的な商品開発の影響を受けて変額年金が急成長するに至り、規模面でも変額年金が定額年金を大きく上回る状況となっている。加えて定額個人年金の変形版として1990年代半ばに保険料元本と最低利率保証付で株価指数上昇率にリンクした超過利率が付与される株価指数連動型年金が発売され、2000年代に入り急成長するなど商品多様化の中で活況を呈している。

医療保険についてみると、米国ではわが国のように普遍的な公的医療保険制度が存在しないという制度的背景の中で、民間生保会社の医療保険に関する役割には独特のものが見られる。このように民間生保会社等が医療費のファイナンスを担うという役割が期待されているため、社会情勢の影響を受けつつも生保会社の収入面では一定程度の存在感があり、継続的に重要な事業部門として機能している。

このように米国生保の部門別の収入保険料推移を見ると、その内容は、米国特有の社会情勢の変化に対応する中で、新商品開発を含む生保業界の激しい競争の結果としての事実であると理解することもでき、生保会社の経営という観点からも示唆に富む事例として見ることが可能であると考えられる。

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