コラム
2009年06月02日

保険契約者=被保険者と死亡保険金受取人の同時死亡

保険研究部 上席研究員   小林 雅史

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6月2日の新聞報道によれば、保険契約者と被保険者が同一人で、死亡保険金受取人と同時に死亡したケースの死亡保険金の帰属について、最高裁判所第三小法廷が初めての判断を示し、死亡保険金は死亡保険金受取人の相続人に帰属し、保険契約者=被保険者の相続人には帰属しないとされたということである。

 死亡保険金の帰属が争われたケースは二つあり、一方は子のいない夫婦が同時に死亡し、一方は夫婦と子が同時に死亡しており、いずれも死亡保険金受取人である妻の親族が死亡保険金の全額受取を求めて提訴した結果とのことである。

現在の商法第676条第2項では、死亡保険金受取人が死亡した場合、誰が死亡保険金受取人になるかについて、「保険契約者カ前項ニ定メタル権利ヲ行ハスシテ死亡シタルトキハ保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人ヲ以テ保険金額ヲ受取ルヘキ者トス」と定めており、保険契約者は死亡保険金受取人が死亡した場合、死亡保険金受取人を再指定できるが、保険契約者がその権利を行使しないまま死亡したケースでは、死亡保険金受取人の相続人が死亡保険金受取人となると規定している。

 これは、死亡保険金受取人の相続人が死亡保険金受取人からの相続により権利を取得するものではなく、商法の規定により、自己固有の権利として死亡保険金受取人となるものとされている。

2008年6月に公布された改正保険法でも、第46条で、「保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる」とされており、ほぼ同様の規定となっている。

現在の商法第676条第2項については、既に最高裁が1993年9月7日に「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」について判断しており、「保険契約者によって保険金受取人として指定された者の法定相続人またはその順次の法定相続人であって、被保険者の死亡時に現に生存する者をいう」としているが、今回、商法に明文の規定がない、保険契約者=被保険者と死亡保険金受取人が同時死亡したケースについて判断が示されたものである。

上記のケースについては、商法では明文の規定がないが、民法第32条の2では、いわゆる同時死亡の推定として、数人の者が死亡し、そのどちらが先に死亡したか明らかでない場合、それらの者が同時に死亡したものと推定する旨規定し、同時死亡の場合は、同時死亡者間に相続は発生しないものとされている。

一方、約款においては、商法第676条第2項に相当する条文はあるが、同時死亡に関する規定は置かれていないのが一般的であり、各社の実務に委ねられている模様である。

今回の判決は、同時死亡のケースでは、同時死亡者間に相続は発生しないから、夫は死亡保険金受取人である妻の相続人にはならず、したがって夫の親族は死亡保険金受取人となり得ず、妻の親族のみが死亡保険金受取人となり得るとしたようである。

新聞報道によれば、配偶者を受取人として保険契約を結んだ夫婦が同時に死亡した場合、誰が受取人になるかは判断が分かれていたとのことであるが、法的には、今般の最高裁判決の考え方が妥当と考えられ、引き続き注視していきたい。

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保険研究部   上席研究員

小林 雅史 (こばやし まさし)

研究・専門分野
保険法・保険業法、英国の約款規制・募集規制等、代理店制度・保険仲立人制度

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