2009年03月25日

人口減少社会の到来(量から質への転換)

猪ノ口 勝徳

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平成20年10月までのデータ等を基礎資料として平成20年の人口動態を推計した「平成20年人口動態統計の年間推計」が厚生労働省から公表されている。
これによると、平成20年の出生数は対前年2千人増加して109万2千人となるものの、死亡数がそれを上回って対前年3万5千人増加し、114万3千人となることから、自然増加数は△5万1千人と大幅な減少となる見通しである。
下表は、最近5年間の出生数、死亡数、自然増加数の推移を示したものである。日本の人口は戦後、平成16年まで一貫して増加を続けてきたが、少子高齢化の影響を受け、平成17年に初めて減少を示した。平成18年は出生数の増加により自然増を確保したが、平成19年には、死亡数の増加により再度減少に転じ、平成20年はさらに減少幅が大きく、5万人の減少になるものと見られているのである。
この状況が続けばどのようなことになるのか、いささか乱暴な計算ではあるが、予測を行ってみたい。平成20年に生まれた109万人の群団について、合計特殊出生率が人口規模を維持できる2+αに回復した場合、この世代が出産するこどもの人数は109万人になる。このとき平均寿命を80歳とすれば、定常状態において総人口は8720万人(109×80)となり、現在の日本の総人口約1億2800万人を大きく下回る。さらに、合計特殊出生率が直近(平成19年)の1.34に止まれば、こどもの人数は73万人(109×1.34×0.5)となり、一層の人口減少は避けられない。我々はすでに、このような社会に生きているのである。企業にとっても、国内市場の縮小は避けられない。
さて、人口が減少する社会においては、今までには見られなかった現象が生じるだろう。たとえば、一人当たり所得が増加したとしても、国全体では、人口減少の影響により所得の伸びがマイナスになることもありえるだろう。このように、従来の右肩上がりの、量を追ったものの見方が通じなくなるのである。このため、これからは、質や効率(上記の例で言えば、一人当たり所得)を低下させないこと、向上させていくことが、従来にも増して、重要になってくるだろう。

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