2009年03月05日

法人企業統計08年10-12月期~大企業・製造業が初の赤字に

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・製造業で赤字転落業種が相次ぐ
・製造業の設備投資の減少幅が急拡大
・10-12月期は過去最大のマイナス成長に下方修正の見込み

■introduction

財務省が3月5日に公表した法人企業統計によると、08年10-12月期の全産業(金融業、保険業、金融機関を子会社とする純粋持株会社を除く、以下同じ)の経常利益は前年比▲64.6%(7-9月期:同▲22.5%)となり、6四半期連続の減少となった。原油をはじめとした資源価格の下落により変動費は減少に転じた(7-9月期:前年比1.3%→10-12月期:同▲10.5%)が、海外経済の悪化を背景とした輸出の急減を主因に売上高の減少幅が急拡大(7-9月期:前年比▲0.2%→10-12月期:同▲11.6%)したため、減益幅は前期から大きく拡大した。
製造業が前年比▲94.3%(7-9月期:同▲27.6%)、非製造業が前年比▲36.1%(7-9月期:同▲18.7%)となった。製造業の経常利益(季節調整値)は5,645億円となり、季節調整値が公表されている1985年4-6月期以降では最低の水準となった。
売上高経常利益率は全産業ベースで1.5%となり、前年に比べ▲2.2ポイントの大幅悪化となった。製造業が▲5.2ポイント、非製造業が▲0.8ポイントなっており、特に製造業の悪化が顕著となっている。人件費、売上原価などのコストは減少しているものの、売上高の減少ペースに追いついておらず、このことが利益率の悪化につながっている。
7-9月期までは原材料高によるコスト増が製造業の収益を大きく押し下げてきたが、10-12月期は輸出の急激な落ち込みに伴う売上高の大幅な減少が収益悪化の主因となった。貿易統計の輸出金額は、08年7-9月期までは前年比でプラスの伸びを維持していたが、10-12月期には同▲23.1%と大幅な減少に転じた。輸出の動きに歩調を合わせる形で、製造業の売上高は08年7-9月期に▲1.5%と6年ぶりに減少に転じた後、10-12月期は同▲16.3%と減少幅が急拡大した。
原材料価格の急低下により交易条件は約6年ぶりに改善に転じたが、売上の急速な落ち込みがその効果を完全に打ち消してしまっている。
09年1月の輸出金額は前年比▲45.7%と減少幅がさらに拡大している。製造業の経常利益は1-3月期には赤字に転落する可能性が高いだろう。
経常利益の内訳を業種別に見ると、製造業では全ての業種が減益となり、18業種中6業種は赤字にとなった(赤字業種:輸送機械、電気機械、石油・石炭、非鉄金属、情報通信、精密機械)。また、資本金10億円以上の大企業では、製造業全体でも初の赤字(▲3,014億円)となった。輸出ウェイトの高い大企業ほど、昨年秋以降の輸出急減の影響をより強く受けていることがうかがえる。
非製造業では、建設業が前年比5.6%の増加となったが、個人消費低迷を反映し、卸売・小売業の減益幅が急拡大(7-9月期:前年比▲3.6%→10-12月期:同▲62.3%)したほか、サービス業が5四半期ぶりに減益となった(前年比▲12.9%)。また、原燃料費高騰によるコスト増から赤字が続いていた電気は、原油価格下落などに伴いコストの伸びは頭打ちとなったものの、売上高の伸びも大きく低下したため、5四半期連続の赤字(▲986億円)となった。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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