2009年02月13日

金融危機下のユーロとポンド

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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  1. 欧州では、統合の進展で相互補完型の関係緊密化が進んでいたため、相互に悪影響を及ぼし合って、揃って景気が大幅に悪化している。
  2. 公的負担の増大への懸念から、ユーロ圏内ではドイツ国債とスペイン等とのスプレッドが拡大している。信用力の低い国にとってユーロの恩恵は明らかであり、ユーロ離脱は考えづらい。しかし、ユーロ圏は単一通貨圏として不完全な状態にあることは確かであり、危機の克服には政策面での協調と補完が不可欠であろう。
  3. ユーロ未導入のEU加盟国では、金融混乱の長期化・深まりとともに、ユーロ導入の機運が高まっているが、イギリスは深刻な状態にありながらも消極姿勢を変えていない。
  4. しかし、ポンドの信認低下、EUの金融規制・監督体制の見直しに対する影響力が限定される状況が続けば、イギリスもユーロ未導入のコストを意識せざるを得なくなる。逆に、大胆な金融政策と大幅な為替調整に、効果的な不良資産対策で対外的な信認回復とユーロ圏よりも早い経済の建て直しに成功する可能性もある。その場合、ユーロからの距離は一段と遠のくことになるだろう。
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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

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