2008年12月26日

30~40代が想定する主観的な将来所得や公的年金収入の傾向

保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任 中嶋 邦夫

北村 智紀

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現在の日本の家計は、諸外国に比べてリスク資産の保有が少なく、効率的な資産形成が行えていない可能性がある。
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家計の資産選択に関する先行研究では、家計が平均的な賃金カーブや公的年金制度を十分に理解しているとの前提に立った上で、生涯収入を考慮して現在の資産配分の決定要因を検証している。しかし、昨今の雇用の不安定化や年金不信を考慮すると、家計は、先行研究が仮定するよりも悲観的な推計値をもとに意思決定している可能性がある。
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本稿では、先行研究が家計の資産配分決定への影響が大きいと指摘する将来所得と公的年金収入に注目した。具体的には、独自のアンケート調査によってこれら2つの主観的な推計値を調査し、客観的な推計値との乖離について分析した。
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その結果、将来所得の現在価値である(狭義)人的資本では、主観的な推計値と客観的な推計値に大きな乖離がなかったが、公的年金収入の現在価値である公的年金資産では乖離にばらつきがあり、主観的な推計値が客観的な推計値を下回る傾向が見られた。そのため、先行研究における分析では、資産選択の前提が適切でない可能性がある。
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公的年金については、2009年から「ねんきん定期便」がスタートし、国民1人1人に年金の見込額が通知される予定である。本稿は同制度スタート前の状況を調査した結果であるが、制度開始後の状況を調査し、資産選択との関係やその変化を明らかにすることを今後の課題としたい。

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