2008年11月26日

誰がリスクを負うべきか

  明田 裕

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この秋の株価急落は家計を直撃し、年金運用のリスクがクローズアップされたが、年金の本来形態である終身年金には、もう一つ長寿化の想定以上の進行というリスクがある。
高齢者には、何歳まで生きるか分からない中で、長生きすることによって生活資金が枯渇してしまうというリスクがあるが、この問題を解決するために考案された仕組みが終身年金保険である。そこでは、多くの加入者が集まることによってリスクの分散が行われ、早死にした人から長生きした人に所得が移転される。
ただ、これで社会全体としてのリスクが解消される訳ではない。現在、世界的に問題となっているのが、高齢層における死亡率の改善が著しく、年金受給開始時点の平均余命の伸長が想定以上に進んでいることである。
この表は我が国の平均寿命と65歳の平均余命の過去半世紀の推移を示したものだが、前半25年間と後半25年間では様変わりである。後半25年間は高齢者の死亡率の改善が平均寿命の伸びの主因であり、65歳の平均余命の伸びは前半25年間の伸びを大きく上回っている。
国立社会保障・人口問題研究所は、2030年までの25年間で65歳の平均余命は男女ともさらに2.5年程度伸びると予測している(中位推計)が、それ以上に伸びる可能性も十分にある。
こうした長寿化の想定以上の進行というリスクは、残念ながら大勢が集まってリスクを分かちあうという保険原理ではカバーできない。このリスクは誰が負うべきなのだろうか。
保険会社としては、安全を見込んで想定より相当低めに予定死亡率を設定するというのが教科書どおりの対応だが、掛け金が高くなりすぎて消費者が購入しにくくなるという問題がある。
世界各国でもこの問題を解決する決め手は見つかっていない。長寿債の発行や長生きリスクの証券化などが試みられているが、こういうリスク(長寿化が想定以上に進行したときに損をするリスク)をテークする主体はなかなか見つからないようだ。結局、国民全体で負担するしかないのではないだろうか。
これまでの発想をがらりと変えて、公的年金は平均余命近辺以降の給付とし、平均余命近辺までは私的年金に委ねるといった方策も検討に値するように思われる。

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