2008年10月31日

利下げ、展望レポート(10/31):7人利下げ賛成、しかしなぜ0.2%利下げなのか

経済研究部 チーフエコノミスト   矢嶋 康次

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■見出し

・7人利下げ賛成、しかしなぜ0.25%の利下げではなく、0.2%なのか
・利下げの効果: 実質GDP押し上げ効果は0.1%以下、気になるのは家計部門へのマイナスインパクト
・展望レポート:景気はいっそうの下振れ、物価の上振れリスクは急速に後退

■introduction

10月31日、日銀は量的金融緩和で金利をゼロに誘導した01年3月以来となる「0.2%の利下げ」を実施した(賛成4、反対の同数となり、議長の白川総裁が利下げ決定)。
白川総裁は会見で反対4人のうち1人が現状維持を主張し、残り3人は0.25%の利下げを主張したことを明らかにした。つまり7人の中では利下げ幅0.05%で賛否が割れていたことになる。
・なぜ0.25%の利下げではなく0.2%なのか?
今回の利下げで最大の不思議はなぜ利下げ幅が0.2%だったのか。通常利下げ幅は刻みが0.25%、0.2%だったことで、日銀は利下げ幅を渋ったというふうに見える。もう一回利下げとなっても小幅にとどめればゼロ金利にならなくてすむために今回0.2%にとどめたとの憶測も呼ぶ。せっかく利下げという判断をしたのに、本音では緩和には消極的だという思惑を市場に高め、ただでも少ない緩和効果をさらに限定的にしてしまうリスクをとる必要があったのだろうか。
・今回も市場との対話は失敗だったといわざるをえない
確かにこの数週間で事態は急変した。24日には円相場が約13年ぶりに1ドル=90円台まで上昇、28日には日経平均株価が約26年ぶりに7000円を割り込みバブル後最安値をつけた。金融市場の緊張感が急激に高まったのは事実だ。
ただ、日銀の動きを振り返ると、10月8日の世界主要国協調利下げに日銀は入らず、白川総裁は会見で利下げの必要性は現時点ではないとのニュアンスを出し続けていた。また27日に副総裁になった山口氏も就任会見などで同様の意見を述べていた。29日までは、市場では31日には流動性対策から準備預金の付利は実施されても、利下げはないとの見方が大半だった。ブラックアウト前の28日までの日銀からの情報発信では、「利下げはない」としか感じ取れなかった。
そうなると(1)28日、与謝野大臣が利下げは「国際協調の象徴的な意味」との発言、(2)28日のNY市場(日本は29日)で「日銀利下げ検討」の報道が流れ市場が完全に利下げを織り込み、株価急騰、円安に振れていたなど、市場、政府との関係で利下げの外堀は完全埋められ、それが日銀を利下げに追い込んだというような見方も出てきてしまう。
総裁は会見で政治的なプレッシャーはなかったと述べたが、「市場との対話」という点では、またまた多くの課題が残ったといえそうだ。
・超過準備への付利:こちらは予想通り
流動性対策の一環として超過準備への付利が全員一致で決定した(付利の利率は0.1%)。今後、無担保コールレートは付利の利率0.1%と補完的貸付金利の0.5%の間で安定的に動くことになる。
付利を導入したことで、プラスの金利を維持したままで量的金融緩和ができる仕組みが整った。今後の経済状況を踏まえれば、来年前半は欧米の利下げも継続、景気面も厳しい局面が続きそうで、ゼロ金利、または量的金融緩和の復活という可能性が高まった。

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経済研究部   チーフエコノミスト

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融、日本経済

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