コラム
2008年09月18日

REITは原点に戻って投資家の信頼向上を目指せ

  岡 正規

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9月に入り、東証REIT(不動産投信)指数は1,200ポイントを下回り、2003年12月以来の低水準となった。年初来の指数下落率は4割近く、上場42銘柄中32銘柄の投資口価格が上場時公募価格を下回る状況にある。

筆者は、REIT本来の商品特性の魅力や不動産証券化市場に対する潜在需要の強さへの期待などから、市場が現在の難局を乗り越え、再び成長トレンドに回帰できるものと信じている(参考:『REITは、“腐っても鯛”』)

実際に、上場来増収・増益を続ける銘柄や、無理な資産拡大を良しとせず投資方針に合った不動産を厳選し運用する銘柄、市況環境と投資主利益を勘案して増資を中止した銘柄、など地に足の着いた運用を行う銘柄も少なくない。とはいえ、市場全体がこれほど低迷するに至った背景として、いくつかの要因を指摘しておきたい。

まず、昨年夏に顕在化した米国サブプライム・ローン問題で、J-REIT市場で取引の半分以上を占めていた海外資金が流出したうえ、不動産セクターへの融資選別の厳格化で資金調達環境の悪化がJ-REIT市場にも及んだことが挙げられる。ただ、このような事態を引き起こした世界的なマネーマーケットの変調と、REITやCMBSなど不動産証券化商品の低迷について、J-REIT運用者に責任を求めるのは酷であろう。

しかし、今年に入り、投資家の信認を失いかねない行為がいくつかあったのも事実である。例えば、分配金の希薄化を招く割安価格での第三者割当増資(参考:『J-REIT市場の規律ある発展に向けて』)や、少数投資主を無視したかのようなTOB(投資口の公開買付け)、である。さらには、利害関係者からの物件取得に際して不動産鑑定業者へ不適切な働きかけを行ったとして、監督官庁から業務改善命令を受けたREIT運用会社もあった。

また、不動産を長期保有し、キャッシュフローを投資主に安定分配することがREIT本来の姿であると考えるが、その前提からすれば、疑問を抱かざるを得ない銘柄も一部だがみられる。具体的には、競争力に劣る立地・設備機能の物件、過度に築年の古い物件、新築・開発案件でキャッシュフローの安定性が不確かな物件を安易に取得する銘柄や、分配金の嵩上げ・水準維持のため保有物件を短期で売買する銘柄、などである。

現在、市場関係者からは、制度の一部改正や投資家(特に配当重視の長期投資家)への広報活動の更なる強化を求める声が強まっている。それらは当然、J-REIT市場の回復・発展にとって重要なことであるが、REIT運用会社には、「既存の投資主利益を第一に、ポートフォリオの質の維持・向上に努める」というREIT発足時の原点に戻り、投資家の信頼向上に努めてもらいたい。

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