コラム
2008年08月04日

福田改造内閣の課題

櫨(はじ) 浩一

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1.福田改造内閣の発足

福田改造内閣が発足した。昨年9月に誕生した福田内閣は、安倍前総理の突然の退任を受けたものであったために、ほとんどの閣僚が前内閣のままであった。その意味では、今回の内閣は「改造」という名称はついているものの、事実上福田総理自らの手による初めての組閣だったと言える。

前内閣から引き続く年金問題の混乱や数々の不祥事で支持率は低迷しており、有力者が顔を並べる挙党体制をとらざるを得ず、改造内閣も顔ぶれが代わり映えしないという批判を浴びている。福田総理は指導力不足と批判されることも少なくないが、野田消費者行政担当相の任命で消費者重視の姿勢を見せるなど、こうした中で何とか少しでも福田色を出そうとしたこともうかがわれる。

2.立ちはだかる「ねじれ国会」という現実

この福田改造内閣の目の前に並んだ課題は多い。総理は談話で、「原油価格高騰による影響への緊急対策」「機動的な経済運営」など、経済運営を課題として掲げた。しかし、対症療法的な対応は考えられるとしても、原油をはじめとした世界的な原材料価格の高騰や、サブプライムローン問題に端を発した世界景気の減速に対して、日本が単独でできることは限られている。

しかも、政策を実施する上で、改造内閣の置かれた状況は厳しい。参議院では野党が多数を握っているという状況は当分の間変わる当てはない。衆議院で連立与党が三分の二の議席を握っているとはいうものの、必ずしも一枚岩ではなく野党の反対を押し切って次々と政策を実施していくことは難しい。緊急事態への対応については与野党間の妥協が成立することもあるだろうが、国民が期待しているような大きな課題について与野党の合意を作り上げ、政策を遂行するということは無理だろう。

3.改造内閣がなすべきこと

首相自らが「安心実現内閣」と命名した改造内閣に求められるのは、国民の安心の最も大きな要素である社会保障制度安定化の道筋について、与党の政策ビジョンを作り上げることではないか。救急患者のたらいまわし、大量の介護難民、年金制度への不信、改善しない少子化など、噴出する社会保障制度に関わる問題は、もはや場当たり的な対症療法では解決できないのは明らかだ。

来年9月には衆議院の任期が満了するので、今後1年ほどの間に必ず総選挙が行われることになる。そこで、どういう道筋で国民に安心をもたらすのか、与野党がそれぞれ明確な政策ビジョンを提示して、選挙戦を通じて国民が選択を行うということを望みたい。
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