2008年06月25日

「指針」以後 -現実主義者の買収防衛策論- -有事導入・発動型防衛策の再評価を中心に-

  村田 敏一

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我が国における敵対的買収防衛策の適切な設計の在り方や、防衛策導入の是非に関する議論状況、そして各企業の導入状況は、現在、一つの踊り場を迎えている。近時の敵対的買収防衛策を巡る法的論議と実務は、平成17年5月に策定された経済産業省・法務省の「指針」と平成17年の「ニッポン放送事件」および平成19年の「ブルドックソース事件」に関する司法判断とそれに対する批判を軸に展開してきた。また、事前警告型を主流とするライツ・プランの「導入」状況は、現状、取引所上場企業の約1割に達している。
「指針」策定の一つの背景には、平時導入型に対し相対的に高い価値観を見出す所論があったが、一連の司法判断は必ずしも平時・有事で決定的に異なった判断準則を使用しているようには評価されない。一方で、ライツ・プランの導入と当該導入企業の株価動向の相関関係については一般論としては、市場(機関投資家等)はその導入にネガティブな反応を示すものとの理解がなされており、その点が、導入率が一割程度に止まっている一因とも指摘される。
防衛策の導入に関する判断は、各企業の置かれている業績状況や株主構成等に照らし、個別的になされる必要があるが、一般論としては、導入スキームの法的安定性(差し止めや損害賠償責任の回避性)、機関投資家等マーケットの反応(すなわち株価動向)、コスト、濫用的買収者の撃退可能性という各要因の比較衡量の中で決定される性質のものである。現在、防衛策の主流をなしている事前警告型について見ると、それが平時導入型なのか有事導入型なのかすら必ずしも明確ではなく、上記の各要因から消去法的に紡ぎだされた「中間型」のスキームとも評価される。
本稿では、「指針」や東京地裁民事8部の司法判断が採用する到達点につき確認するとともに、またそれに対してなされている多面的な批判(機関権限分配秩序論や財産権保障論への批判、公開買付に関する規律の重視論等)への再批判的検討を通じ、法律論としては現在の「指針」や司法判断が採る立場が基本的に合理性を有することを再確認するとともに、「中間型」スキームである事前警告型の延長線上に位置づけられる「有事導入・有事発動・株主総会判断型」の相対的総合優位性の可能性を確認する視点から試論を展開することとしたい。

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