コラム
2008年06月02日

地球温暖化問題~二酸化炭素削減の先にあるもの

櫨(はじ) 浩一

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1.注目を浴びる温暖化問題

中国四川省の大地震を見るにつけ、自然の力の大きさに今さらながら驚かされる。科学技術が進歩したとは言うものの、人間の力はまだまだ微々たるものだ。台風や地震を止めることはおろか、大規模な地震の予知すらなかなかできない。大自然の驚異の前では人間は全く無力であることを思い知らされた事件であった。

しかしその一方で、人間活動が地球環境に影響を与えており、地球温暖化問題が活発に議論されるようになっている。人間活動の拡大に伴って二酸化炭素、メタン等の温室効果ガスが大量に大気中に排出され、このため地球が温暖化しているという問題だ。

温室効果ガスの排出を削減することで、現在の経済活動には様々な制約が加わることになり、各国がどれだけ排出量を削減するかということになると、利害もからんでくる。さらには、実際に地球の温暖化という事実自体に疑問を投げかけている科学者もいて、具体的な削減に向けた動きはなかなか進まない。

2.温暖化ガスの削減だけで十分か?

温室効果の話を何度も聞いているうちに、人類が発生させているエネルギーも温暖化の原因ではないか、温暖化防止のために二酸化炭素の排出量を減らすだけで大丈夫なのだろうかという素朴な疑問がわいてきた。少し調べてみたが、素人の疑問ははるか昔に解決されていた。人類が発生させているエネルギーは、太陽から届くエネルギーの1万分の一程度に過ぎないということだ。したがって地球を温暖化させている原因としては、人類のエネルギー消費よりも、温暖化ガスの効果が圧倒的に大きいということのようだ。このため、異常気象や温暖化の主因は、二酸化炭素濃度上昇による温室効果であり、これを緩和することが現在の課題とされている。

しかし、人間が発生させている熱はすでに地震のエネルギーをはるかに超えており、風や波のエネルギーの規模の数十分の一という規模になっていて、気象の変化に無視できない規模になっているらしい。そうだとすれば、地球の温暖化を防止したり異常気象を防止したりするためには、二酸化炭素の排出量を減らすというだけでは不十分かもしれない。

日本は、7月に北海道洞爺湖で開催されるサミットにおいて、温室効果ガスを2050年までに50%以上削減することを義務化することを目指している。この目標達成のための手段には、二酸化炭素を地中に埋めてしまうことや、原子力発電などの二酸化炭素を排出しないエネルギー源への転換も含まれている。温室効果ガスの削減と同時に、人間が発生させているエネルギー自体を削減しなくてはならないとすれば、こうした手段は使えなくなってしまう。

3.サマータイムは受け入れられるか

二酸化炭素の排出量を半分以下にするというのは大変な目標で、皆が普段の生活で少しずつ節約・工夫するというレベルではとても達成できそうもない。それ以上に、人類が発生させている熱エネルギーそのものを削減しなくてはならないとすれば、さらにハードルが高くなり、問題解決のために全く違う発想が必要になるだろう。

巨大だと思っていた地球は意外に小さかったということなのか、いつの間にか人間の活動が自然を脅かす規模に拡大してしまったということなのか。いずれにせよ、我々が非常に困難な問題への対応を迫られていることは確かで、これまで現実的ではないとされていた手法も含めて検討されるべきだろう。

しかしこの際に、国民もこれまでの生活スタイルを転換などといった相当な努力を求められることを、十分周知、議論すべきだ。サマータイムの導入の議論もあるようだが、時計を1時間早めるのではなく、官公庁や会社、学校の始業時刻を1時間早めるということではいけないのか、国民が納得しているとは思えない。一部の専門家や危機感をもった人たちだけで対策を決めてしまい導入時に混乱を生じたりすると、大きな反発を受けて逆もどりしてしまい、却って対応が遅れることになるのではないか。
 
注:太陽から地球に降り注ぐエネルギーは1年間で5.5×1024J(ジュール)であるが、三分の一は反射されて宇宙空間へ戻ってしまう。大体4×1024Jのエネルギーが太陽から地球に届いていることになる。一方、人類が1年間に原油の消費や原子力発電などで発生させているエネルギーは、3×1020J程度ということだ。
 しかし、地球表面の風や波のエネルギーは、1.1×1022J、地震のエネルギーは1017J程度に過ぎず、人間が発生させているエネルギーは無視できない規模に達しているらしい。
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