コラム
2008年04月21日

揮発油税暫定税率期限切れの波紋

経済研究部 専務理事   櫨(はじ) 浩一

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1.政策に揺れる景気

2007年6月に改正建築基準法が施行された際には、準備態勢が整っていなかったことから、建築確認の処理が遅れるなどの混乱が生じ、建築着工は大きく減少した。このため住宅投資は同年7-9月期以降大きく落ち込むことになった。今年に入ると、3月に任期切れとなった日銀執行部の後任人事をめぐる与野党の対立から、日銀総裁不在という異常事態となった。新副総裁となったばかりの白川氏が新総裁となって総裁空席は解消されたが、4月下旬になっても未だに副総裁一人と審議委員一人が空席という変則状態が続いている。
   いざなぎ景気を超える長期にわたってきた今回の景気回復が、変調をきたしている最も大きな要因は、昨年夏以降世界中を揺るがしているサブプライム問題の影響であることは確かだ。しかし日本の場合には、サブプライム問題の影響を政策や政治の混乱が増幅している。

2.暫定税率失効の影響

揮発油(ガソリン)税の暫定税率の期限延長問題では、暫定税率の失効によって4月からガソリン価格が大幅に下落するとの予想から3月に買い控えがおこった。揮発油税がいわゆる蔵出し税で、暫定税率が失効した4月1日の時点ではスタンドには高い税率で出荷されたガソリンと暫定税率失効後の低い税率のガソリンが混在するという状況となり、混乱も予想された。幸いにして大混乱は無かったものの、値下げ競争に巻き込まれて高い税率のガソリンを安く売らざるを得なかったスタンドの経営に打撃を与えたのは確実だろう。
   今後暫定税率が復活することになれば、今度は値上がり前の駆け込み需要と、その反動減が発生して、新たな変動を作り出すことが予想される。さらには経済的な問題だけではなく、灯油用ポリタンクなどに買いだめしたガソリンを入れる人が出てくることも考えられ、火災に繋がって人命に関わる問題にもなりかねない。自動車重量税の暫定税率は今月30日に期限が切れる。政府、与党はそれまでに暫定税率を延長する改正案を再議決するとみられるが、ずれ込んだ場合には車検にお客が殺到するなどの混乱も予想される。

3.正確な影響の判断ができるか?

こうした直接の混乱だけではなく、もうひとつ懸念されるのは、地方公共団体の財政を通じた景気への影響だ。税収の減少によって地方自治体の歳入の減少が予見できるので、道路関連の公共事業の凍結が相次いでいると報道されている。道路特定財源については多額の無駄遣いも指摘されており、一般財源化も含めた改善が不可欠だろうが、当面の問題としては、公共事業の急減が不安定な景気動向にさらなる悪材料となる恐れがあることが指摘できる。
   あまり認識されていないことだが、ここでの大きな問題は、景気を判断する上で、実は政府の動きは情報が少ないということだ。景気判断の重要な材料であるGDP統計でも、政府部門の動きが正確に把握できていないのではないかという懸念がある。国や地方公共団体の支出は、年度単位の決算で正確に把握することができる。しかし、地方公共団体については3月にようやく2006年度決算が地方財政白書として取りまとめられたばかりであるなど、迅速に情報が集まっているとは言い難い。四半期毎の動きとなればさらに心もとないし、いわんや月単位の動向となればほとんどお手上げ状態だ。正しい状況判断を下すための情報が不足しているという意味で、日本の統計には色々な問題がある。

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経済研究部   専務理事

櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)

研究・専門分野
マクロ経済・経済政策

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