2008年04月14日

ワシントンG7:8年ぶり為替変動に対する懸念を表明

総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次

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■見出し

・世界経済:景気悪化、インフレのスタグフレーション懸念
・為替:8年ぶり為替変動に対する懸念を表明
・市場安定化策:公的資金についての言及なし

■introduction

7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が4月11日ワシントンで開かれた。
世界経済の見方について前回(2月東京)に比べて「短期的な世界経済見通しは悪化した」とした。さらに「原油及び一次産品価格高騰の国際的影響、そしてその結果としてのインフレ圧力によって、景気見通しに対する下方リスクが残存している」とし、前回に比べてスタグフレーションの懸念を高めている。
為替について「主要通貨において時として急激な変動があり、我々はこれらが経済及び金融の安定へ与えうる影響について懸念している」と、8年ぶりに為替変動に対する懸念を表明し、急速なドル安に警戒感を示した。
金融機関規制へ踏み込み、情報開示の改善やリスク管理の強化、証券化商品の格付けの見直しなどを盛り込んだ金融安定化フォーラムの報告を強く支持するとして、実行をコミット。G7として重要な項目を「100日以内」「2008年末まで」など実施する期間を明記し各国に対応を求めるなど、中長期的には金融市場の安定に寄与する内容となっている。
ただし、短期的な資本増強策には、「資本を大幅に増強しようとする多くの金融機関の努力を歓迎する」との言及にとどまり、市場が期待する「公的資金の活用」などへの言及はなかった。
今回声明文で急激な変動に懸念を表明したが、サブプライム問題に対する即効性のある対策や、各国の協調姿勢が強くだされなかったため、全体的には市場の不安はぬぐえていない。
市場の株安、ドル安の流れは当面続く可能性が高い。米国景気の一段の悪化、金融機関損失拡大・資本増強策の不振、などネガティブ材料が出た場合、大きく下振れするリスクが高い状況に変化はない。

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総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

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