2008年04月11日

4月ECB政策理事会~景気と物価両面で警戒を引上げ

経済研究部 上席研究員   伊藤 さゆり

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■見出し

・「当初の想定より長期化」している物価上振れと金融市場の緊張
・身動きがとれない状況が長期化する可能性も

■introduction

欧州中央銀行(以下、ECB)は10日開催の4月の政策理事会で4%での政策金利の据え置きを決めた。
直近のユーロ圏の主要な経済指標は、3月のPMIは製造業、サービス業ともに低下(2月52.3→3月52.0、同52.3→同51.6)したが、引き続き拡大と縮小の分かれ目となる50を上回る水準で持ちこたえた。2月の小売統計は1月の反発を相殺する前月比マイナス0.5%と冴えなかったものの、失業率は2月に続く7.1%で93年の統計開始以来の最低水準で横這い、消費者信頼感指数も3カ月横這いと下げ止まり、雇用・所得の伸びに支えられた消費拡大への期待をつないだ。他方、消費者物価上昇率は3月速報値が前年比3.5%まで加速した(図表1)。
これらの新たな材料は、3月の段階の「景気は減速方向にはあるものの、成長は続いており、価格転嫁や賃金設定を通じたインフレ圧力もなお根強い」という判断を変える内容でなかったことから事前の段階で政策金利の据え置きは確実とみられていた。
今回のトリシェ総裁の声明及び質疑応答のポイントは以下のとおりであるが、物価の上振れリスクと金融混乱の影響による景気下振れのリスクの双方に対して警戒を引上げており、中立的なスタンスが維持されたと考えられよう。
(1) 物価のリスクは短期的にも中期的にも「上振れ」という判断を維持した。声明文の冒頭に「一時的な物価の上振れは長期化している」との表現を挿入、中期的な物価の上振れリスクを「広範」、「明確」とすることで、物価上振れリスクへの警戒を強めた。
(2) 物価の上振れ要因としては、「原油高・食品価格上昇」、「管理価格や間接税の引き上げ」、「賃金と価格設定」を挙げ、「賃金交渉の動向は引き続き注意深く見守る」とした。ドイツの賃金交渉の高めの水準での妥結の動きなどを意識したものと思われる。
(3) インフレ警戒のスタンスに関して、「二次的影響を抑制し、中期的な物価の上振れリスクが現実化しないことを引き続き強く約束する」という先月同様の強い表現を用いた。
(4) 経済のファンダメンタルズは「健全(sound)」、成長のテンポは「減速しているが成長は続いている」との表現を踏襲した。2月に削除された「新興国の力強い成長」という文言がユーロ圏の輸出をサポートする要因として復活、投資の拡大が続く理由付けに「銀行ローンの供給が制約されている兆候も見られない」が新たに付加された。
(5) 「景気見通しの先行きの不確実性は高い」という表現に加えて、下振れリスクに対する表現を「引き続きある」から「広がっている(prevail)」に改め、その理由を「金融混乱が当初の想定よりも長期化しており、実体経済への影響が現在予想されているよりも広範になりうる」という見方を示し、景気下振れリスクへの警戒を強めた。
(6) 流動性に関しても「中長期的な物価上振れリスク」という判断を維持した。2月もマネーサプライ(M3)は、民間向け貸出の伸びに支えられて前年同月比11.3%と高水準の伸びが続いた(図表2)。
(7) 質疑応答の中で、今回の決定は「全会一致」であり、利下げ、利上げのいずれも求める意見はなかったとした。

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経済研究部   上席研究員

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州経済

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