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- 企業経営におけるサステナビリティの意味合いと「草の根SRI」投資家
コラム
2008年04月10日
市民が社会貢献を思い立ったとき、ボランティア活動への参加、フェアトレード製品の購入、チャリティーへの資金拠出など、いくつかの方法が思い浮かぶ。もし、株式投資に興味がある、あるいは既にいくつかの銘柄を保有しているといった方々には株式投資を通じた社会貢献であるSRI(社会的責任投資:Socially responsible investment)は如何だろうか。
これは、人類社会や地球環境に貢献している企業を株式投資を通じて応援しようとするものだ。これを手っ取り早く行うには、専門家が運用しているSRI投信を買うという方法がある。この投信ファンドは専門家が、企業のCSR(企業の社会的責任: Corporate Social Responsibility)活動を評価して、組み入れ銘柄を決定するという運用がなされている。
ただし、SRIに市民個人の社会貢献についての価値観やこだわりを反映させようと思えば、自分自身の価値観で企業のCSRを評価し、応援したい企業の株式を保有する道がある。これを筆者は「草の根SRI」と呼んでいる。もちろん、SRIファンドを持っている投資家が、別途、個別銘柄を保有し、議決権行使も行いながら自分流のSRIを組み立てることも洒落ている。
「草の根SRI」では、投資家個人による企業のCSR評価が不可避だが、そのとき役に立つのが、企業が自らのCSRについて報告するCSR報告書である。このCSR報告書からはCSRに関する企業の基本観が読み取れる。そこでのポイントは、その企業が、経営の場面で持続可能性、あるいは、サステナビリティということをどのように捉えているかということである。
ある報告書では、「人・社会・地球環境との調和を図り、持続可能な社会の発展を目指す」という趣旨の考え方が掲げられている。この考えどおりの経営を組み立てるならば、まず、ビジネスモデルが人類社会や地球環境のサステナビリティを高めるという前提条件の下で設計されている必要がある。極端な言い方をすれば、CSRがビジネスモデルに組み込まれているともいえよう。
他方、別の報告書では、「健全な企業活動を行い、本来業務に加えて社会貢献活動を行いステークホルダーの期待に応えることで企業価値の向上と企業の持続的発展を目指す」という趣旨の考え方が示されている。この考え方の下では、CSRは本来のビジネスモデルを機能させるための企業活動に対して、上乗せされる別の活動という位置付けとなる。また、CSRには、ステークホルダーの満足を通じ、自社のサステナビリティ、あるいは企業価値を改善する効果を期待している。
前者は「人類社会や環境のサステナビリティ」に対してビジネスのプロセスそのものを通じて貢献する存在としての企業像を前提としており、後者は、ビジネスの世界においても人類社会や環境への配慮は、「自社のサステナビリティ」を高める意味で決して疎かにしてはならないと考えて行動する企業像が描かれている。
「草の根SRI」投資家からすれば、企業のCSRに関する基本観は、投資の対象として活動を応援したい企業であるか否かを決める重要なポイントと考えられる。一見同じように見える企業の具体的CSR活動も違った発想の上に成り立っていることがある点は知っておきたい。「草の根SRI」投資家が株式を保有し、長期にわたり支援できる銘柄を探すには、CSRの基本観のところで共感できることが必要といえよう。「草の根SRI」は市民の様々なCSR基本観を株式市場に集約する道筋だ。
これは、人類社会や地球環境に貢献している企業を株式投資を通じて応援しようとするものだ。これを手っ取り早く行うには、専門家が運用しているSRI投信を買うという方法がある。この投信ファンドは専門家が、企業のCSR(企業の社会的責任: Corporate Social Responsibility)活動を評価して、組み入れ銘柄を決定するという運用がなされている。
ただし、SRIに市民個人の社会貢献についての価値観やこだわりを反映させようと思えば、自分自身の価値観で企業のCSRを評価し、応援したい企業の株式を保有する道がある。これを筆者は「草の根SRI」と呼んでいる。もちろん、SRIファンドを持っている投資家が、別途、個別銘柄を保有し、議決権行使も行いながら自分流のSRIを組み立てることも洒落ている。
「草の根SRI」では、投資家個人による企業のCSR評価が不可避だが、そのとき役に立つのが、企業が自らのCSRについて報告するCSR報告書である。このCSR報告書からはCSRに関する企業の基本観が読み取れる。そこでのポイントは、その企業が、経営の場面で持続可能性、あるいは、サステナビリティということをどのように捉えているかということである。
ある報告書では、「人・社会・地球環境との調和を図り、持続可能な社会の発展を目指す」という趣旨の考え方が掲げられている。この考えどおりの経営を組み立てるならば、まず、ビジネスモデルが人類社会や地球環境のサステナビリティを高めるという前提条件の下で設計されている必要がある。極端な言い方をすれば、CSRがビジネスモデルに組み込まれているともいえよう。
他方、別の報告書では、「健全な企業活動を行い、本来業務に加えて社会貢献活動を行いステークホルダーの期待に応えることで企業価値の向上と企業の持続的発展を目指す」という趣旨の考え方が示されている。この考え方の下では、CSRは本来のビジネスモデルを機能させるための企業活動に対して、上乗せされる別の活動という位置付けとなる。また、CSRには、ステークホルダーの満足を通じ、自社のサステナビリティ、あるいは企業価値を改善する効果を期待している。
前者は「人類社会や環境のサステナビリティ」に対してビジネスのプロセスそのものを通じて貢献する存在としての企業像を前提としており、後者は、ビジネスの世界においても人類社会や環境への配慮は、「自社のサステナビリティ」を高める意味で決して疎かにしてはならないと考えて行動する企業像が描かれている。
「草の根SRI」投資家からすれば、企業のCSRに関する基本観は、投資の対象として活動を応援したい企業であるか否かを決める重要なポイントと考えられる。一見同じように見える企業の具体的CSR活動も違った発想の上に成り立っていることがある点は知っておきたい。「草の根SRI」投資家が株式を保有し、長期にわたり支援できる銘柄を探すには、CSRの基本観のところで共感できることが必要といえよう。「草の根SRI」は市民の様々なCSR基本観を株式市場に集約する道筋だ。
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