コラム
2008年04月02日

長寿医療制度 ― 急変は月末にお願いします?

  阿部 崇

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後期高齢者医療制度はイメージが悪いので、明日から「長寿医療制度」と呼ぶことにします。満75歳以上を対象とした新しい医療保険制度の仕組みがスタートした4月1日の夜、厚生労働大臣は「この呼称で周知徹底を図りたい」と言った。

後期高齢者医療制度は、積年の課題であった“老人医療費の削減”に向けた第一歩として、2007年制度改革の柱として導入された。新制度の詳細は「医療費削減を担う高齢者の『財力』と『体力』(基礎研Report2007.10)」に譲るが、特徴としては、(1)年金天引での保険料徴収、(2)新制度用の診療報酬の適用が挙げられる。
   (1)に関する問題は多くの報道でも取り上げられ、年金給付に関する社会的不安が一向に収まらない中で医療保険料の天引がスタートすることを、「年金給付の後始末はちょっと待ってね、でも、もらう方はキチンともらうよ」ということか、と批判されている。しかし、問題は(2)の方が大きいかもしれない。高齢者がこれまでと同じように医療機関にかかることを難しくする項目が多く導入されるからである。

そのことを端的に示す項目(点数)が「後期高齢者診療料」である。これは、糖尿病や高血圧性疾患などの慢性疾患の高齢者を外来(通院)で診る場合に、診療所がその高齢者の医療給付として受け取る対価である。1人の高齢者について月6,000円(患者負担は1割の600円)で設定され、診療所は6,000円の中でほとんどの医療(診療計画の作成、療養指導、検査・レントゲン・処置)を賄わなければならない。
   問題は、この点数に、「高齢者1人について1つの診療所にしか適用されない」、「急変があっても同月内の医療は全てこの対価の中で評価される(出来高評価への切り替えは次月から)」というルールがあることである。
   これは、何を意味するのか。 ――― 悪い面だけを挙げれば、「複数の病気があっても、75歳以上になったら行きつけの診療所を一つ決めて、そこに行きなさい」、「一つ決めた診療所以外にかかったら、そっちでも新たに6,000円以外のお金がかかりますよ」、「もし急変しても、診療所は6,000円を超える分の医療を提供できないから治療は来月まで待ってね」ということである。
   地域医療を担う診療所は、赤字覚悟で6,000円を超える医療を提供し続けることはできないだろう。診療所の本音としては、「今月は6,000円の定額評価の月だから、急変は(評価方法が切り替えられる)月末にお願いします」という感じではないだろうか。

このような仕組みは、医療経済で言うところの無駄の排除なのだろうか。この事実を知る高齢者・国民はいったいどれだけ存在するのであろうか。長寿医療制度に看板替えしたら、これらのルールは本当に周知徹底されるのか。今求められているのは、呼称変更によるイメージアップではなく、高齢者に対する「丁寧な説明」であろう。

阿部 崇

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