2008年02月08日

2月BOE金融政策委員会~25bpの追加利下げを決定

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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■見出し

・政策金利は5.25%に引き下げ
・インフレ期待の高まりを警戒、利下げ幅は25bpに抑制
・今後は住宅、雇用指標次第で連続利下げ、大幅利下げの可能性も

■introduction

2月6日、7日に開催されたイングランド銀行(以下、BOE)の金融政策委員会(MPC)は、政策金利の25bpの引き下げを決めた。BOEの利下げは2年4カ月ぶりとなった12月に続くものである。
先月(1月)のMPCでは、利下げ票を投じたのはハト派のブランチフラワー委員のみに留まったが、事前の段階で、今月のMPCでの利下げは確実視され、焦点は利下げの幅と追加利下げが示唆されるかにあった。
先月の議事録からは、エネルギー価格上昇、食品の値上がり、ポンド安によって、今年前半は、従来想定されてきたよりも速いピッチで物価が上昇するとの修正が行われたことがわかっている。こうした状況で、12月に続いて利下げを行うことは、「MPCがインフレ目標より需要の安定を重視しているという誤ったメッセージとなるおそれ」があるということが、1月には据え置き票が8と大勢を占める結果となったようだ。
しかし、前回MPCの後、米国経済の減速懸念から世界的に株価が急落、イギリスでも、住宅価格の調整を裏付ける材料が相次ぎ、12月の小売売上高が減少し、クリスマス商戦が盛り上がりに欠けたことも確認された。サービス業のPMIは1月も52.5と前月から小幅ながら改善、拡大と縮小の分かれ目となる50を上回ったが、消費者信頼感調査では景気と雇用見通しの悪化、物価上昇を背景に、購買意欲が大きく低下、需要の6割強を占める個人消費の低迷が続く可能性が示唆された。
MPCの決定に関する声明文では、「外需の悪化、金融市場の混乱は続いており、イギリス国内の信用状況はタイト化、消費は減速」しており、「生産の伸びが過去の平均水準まで鈍化、今後一層の減速が見込まれる」ことが、「物価の下振れリスクになる」として今回の利下げの理由が説明されている。今回のMPCの議論の叩き台なった2月の「インフレ報告」では、前回(11月)時点の見通しよりも、景気の下振れリスクは高まり、中期的な物価上昇圧力は弱まったとの判断が多数を占めたことで利下げが決定されたようだ。

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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴
  • ・ 1987年 日本興業銀行入行
    ・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
    ・ 2023年7月から現職

    ・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
    ・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
    ・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
    ・ 2017年度~ 日本EU学会理事
    ・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
    ・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
               「欧州政策パネル」メンバー
    ・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
    ・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
    ・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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