2008年02月08日

2月ECB政策理事会~全員一致で据え置きを決定

経済研究部 上席研究員   伊藤 さゆり

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■見出し

・政策金利は8カ月連続で据え置き
・注目される3月のECB経済見通し

■introduction

・インフレ警戒を維持しながらも、景気の見方は一段慎重化
欧州中央銀行(以下、ECB)の2月の政策理事会が7日に開催され、4%での政策金利の据え置きを決めた。前回理事会後、米国の景気後退懸念の高まりから世界的に株価が下落、欧州株も大幅な調整に見舞われ、経済指標では小売統計の不振が目立った。
以下のような、理事会後の記者会見におけるトリシェ総裁の声明並びに質疑応答の内容からは、インフレ警戒も維持しつつ、景気見通しの下方修正を示唆する幾つかの修正の跡も伺われた。据え置き決定は「全員一致」で、前回示唆された利上げの提案はなかったとされた。
(1) 物価は1月(速報値)も「原油価格と食品価格の上昇の影響」で、前年同月比3.2%と高水準で推移している。物価のリスクは短期的にも中期的にも「上振れ」とした。
(2) 物価の上振れ要因としては、「原油高・食品価格上昇」、「管理価格や間接税の引き上げ」に先んじて、労働市場は「タイト」で、稼働率は「高い」とし、「予想を上回る賃金の上昇」、「競争が低い分野での価格転嫁の広がり」という足もとの物価上昇の二次的影響のリスクに言及した。
(3) インフレ警戒のスタンスに関して、1月には「二次的な影響と物価の安定に関する中期的なリスクが現実化せず、結果として中期的なインフレ期待が物価の安定に沿ったものに落ち着くように先制的(pre-emptively)に行動する用意がある」という強い表現を用いたが、今回は「二次的影響を抑制し、中期的な物価の上振れリスクが現実化しないことを引き続き約束する」に幾分緩和した。
(4) 経済のファンダメンタルズは「健全」という評価を維持した。10~12月の成長率(14日に速報値公表予定)は、7~9月期の前期比0.8%成長に比べると「より穏やかなペース」となるが、「潜在成長率の下方での成長」が続いているとの見方を示した。経済の健全性を示す材料として、引き続き「収益性」と「雇用の拡大と25年ぶりの失業率の低さ」を挙げ、さらに「目だった不均衡が見られないこと」を加え米英との違いを示唆した。
(5) 景気のリスクは引き続き「下振れ」とした。先月まで声明文に盛り込まれていた「米国の景気減速の影響は新興国の旺盛な需要によって相殺され、外需はユーロ圏の輸出をサポートする」との表現を削除したことや、「新たなデータで景気のリスクは下振れ方向にあることが確認された」といった表現を盛り込むことで、景気見通しの下方修正を示唆した。
(6) 流動性に関しては「中長期的な物価上振れリスク」という判断を維持した。12月の流動性指標ではマネーサプライ(M3)の伸びが前年同月比11.5%にやや大きく鈍化したが、「依然として旺盛」とした。また、「1月の銀行サーベイで貸出基準の厳格化が示された」ものの、対民間部門向け貸出の伸びも同11.1%で前月と同水準となるなど「これまでのところ金融混乱が銀行の信用供給の妨げとなっていない」との見方を示した。家計向けの貸出の鈍化は、「利上げとユーロ圏の一部における住宅市場の減速を反映したもの」とした。

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経済研究部   上席研究員

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州経済

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