2008年01月11日

1月ECB政策理事会~強調されたインフレ警戒姿勢

経済研究部 上席研究員   伊藤 さゆり

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■見出し

・政策金利は7カ月連続で据え置き
・利上げバイアスを維持しながら、据え置きを継続する見込み

■introduction

・原油高の二次的影響を引き続き牽制
10日に開催された欧州中央銀行(以下、ECB)の1月の政策理事会では、7カ月連続の4%での政策金利の据え置きを決めた。
理事会後の記者会見におけるトリシェ総裁のコメントの注目点は以下のとおりである。
(1) 物価は、12月(速報値)も前年同月比3.1%と上振れが続いているが、「原油価格と食品価格の上昇による」ものとした。
(2) 物価のリスクは短期的にも中期的にも「上振れ」として、利上げバイアスを維持した。
(3) 物価の上振れ要因としては、「原油高・食品価格上昇」、「管理価格や間接税の引き上げ」に先んじて「予想を上回る賃金の上昇」、「競争が低い分野での価格転嫁の広がり」に言及、足もとの物価上昇の二次的影響を強く牽制した。
(4) インフレ警戒のスタンスに関して、10月から用いられている「物価の上振れリスクを抑制する用意がある(ready to counter upside risk to price stability)」という表現を、「二次的な影響と物価の安定に関する中期的なリスクが現実化せず、結果として中期的なインフレ期待が物価の安定に沿ったものに落ち着くように先制的(pre-emptively)に行動する用意がある」というより踏み込んだ表現に改め、警戒姿勢を強めた。記者会見での質疑応答も含め、インフレ期待の安定化は、「政策理事会の使命に照らし合わせて最優先の課題である」という点が強調された。
(5) 経済のファンダメンタルズは「健全」という評価を維持した。景気拡大のペースは、7~9月期の前期比0.8%成長に比べて「より穏やかなペース」ながら「成長は続いて」おり、メイン・シナリオは「潜在成長率並みの成長」にあるとの見方を示した。経済の健全性を示す材料としては、「収益性」と「雇用の拡大と25年ぶりの失業率の低さ」を挙げた。なお、11月の失業率は7.2%で前月から低位で横ばい、12月の製造業PMI、ドイツIfoの企業サーベイや、欧州委員会の企業景況感指数、消費者信頼感指数はいずれも悪化したが、PMIは拡大と縮小の分かれ目となる50を上回る水準、その他のサーベイも長期平均を上回る水準で持ちこたえている。
(6) 景気のリスクは引き続き「下振れ」とし、リスク要因としては、先月と同じ、「金融混乱がマインドや資金調達環境に及ぼす影響」、「原油、商品価格の一層の上昇」、「保護主義の圧力」、「世界的不均衡に関わる無秩序な展開」を挙げた。
(7) 流動性に関しては「中長期的な物価上振れリスク」という判断と「これまでのところ、8月初旬以降の金融市場の混乱が、マネーや信用全体に及ぼした影響は小さい」との見方を維持した。11月の流動性指標はマネーサプライ(M3)が前年同月比12.3%、対民間部門向け貸出は同11.0%と高い伸びが続いた。

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経済研究部   上席研究員

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州経済

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