コラム
2007年12月27日

ゴア氏とIPCCのノーベル平和賞が意味するもの(その1)

  川村 雅彦

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(つづく)

【地球温暖化に挑戦する政治家と科学者】

12月10日、今年のノーベル平和賞が授与された。受賞者は元米国副大統領アル・ゴア氏、そして国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)である。いずれも地球温暖化(気候変動)は全世界が緊急に対処すべき問題だと主張し続けてきたことが、受賞につながった。
   ゴア氏は2000年の大統領選での敗北のあと、1000回以上にわたる世界各地への行脚のなかで、異常気象やハリケーン被害などを示しつつ、地球温暖化が遠い将来の問題ではなく既に現実の問題であることを訴えてきた。これを映像化したものが、今年のアカデミー賞を受賞した映画「不都合な真実」である。米国のブッシュ政権は京都議定書から離脱したままであるが、ゴア氏の影響もあって、複数の州政府や主要企業は温暖化対策を講じ始めた。
   一方、IPCC(1988年設立)は、日本を含む世界中の科学者が集結して、これまで地球温暖化を巡る国際交渉の前提となる科学データを提供してきた。これが京都議定書の成立にもつながったのである。特に、今年に入って公表した第四次報告書(現状と原因、影響、緩和措置)では、人間活動が地球温暖化の原因であることを事実上断定し、今後20~30年の全世界の努力と投資が温室効果ガスの安定化のカギとなると訴えた。
   地球温暖化に挑戦する政治家と科学者。それぞれ立場は異なるものの、ノーベル平和賞選考委員会には、両者が「地球社会の持続可能性」すなわち「世界平和」に貢献したとの判断があったと考えられる。近年の平和賞受賞者の顔ぶれを見れば、一目瞭然である。ゴルバチョフ、スーチー、マンデラ、アナン、マータイ、ユヌスなどの各氏があげられ、それぞれ民主主義、人権、環境、貧困の領域で偉大な貢献をした人々である。
   先進国の温室効果ガス排出量の削減目標を決めた京都議定書の第一約束期間(2008~2012年)が、いよいよ来年から始まる。その直前というだけでなく、地球温暖化問題から見て意義深い2007年という年に、ゴア氏とIPCCへのノーベル平和賞授与は強いメッセージ性をもつことになる。

【地球温暖化問題からみた2007年の位置づけ】

それでは、2007年は地球温暖化問題からみてどういう年だったのか。3月の国連安保理事会で地球温暖化が始めて討議され、6月のハイリゲンダム・サミットでは2050年までに世界の温室効果ガス排出量を半減することを真剣に検討することが合意された。続いて9月には、国連の潘事務総長の呼びかけにより首脳レベルでの温暖化問題が討議された。
   この12月には気候変動枠組条約締結国会議(COP13)がバリ島で開催され、主要排出国である米国・中国・インドも参加する形で、2013年以降の新しい枠組である「ポスト京都議定書」を2009年末までに合意すること(バリ・ロードマップ)を決めた。なお、米国と歩調を合わせ京都議定書から離脱していたオーストラリアでは、12月初めの労働党政権の誕生により京都議定書の批准手続きを開始した。2007年は、まさに地球温暖化防止に向けたエポックメイキングの年となったのである。
   一方で、ポスト京都議定書の枠組づくりに向け、温室効果ガス削減の数値目標を含めた議論(駆け引き)が本格化する。これは将来にわたって各国の経済・産業や雇用などに直接影響を与えるため、今後二年間は地球温暖化防止が世界的な政治交渉の主要テーマとなる。来年7月には、地球温暖化問題を主題とする洞爺湖サミット(日本が議長国)が開催される。

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