コラム
2007年12月19日

委任状争奪戦と提携戦略をどう考えるべきか

  小本 恵照

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1.委任状争奪戦に至る経緯と株価の推移

調剤薬局大手のアインファーマシーズ(以下、アイン)とドラッグストア大手のCFSコーポレーション(以下、CFS)が10月5日に発表した共同持株会社設立による経営統合計画(2008年1月22日の臨時株主総会で決議予定)に対し、大手小売業のイオンが反対、12月17日から委任状の勧誘を始めたことで委任状争奪戦が開始された。イオンは2000年4月にCFSコーポレーション(旧ハックキミサワ)と資本・業務提携し、15%の株式を保有する筆頭株主であり持分法適用会社でもある。

イオンがCFSの経営統合に反対している理由は、経営統合を行う手続きである株式移転における株式移転比率が不当だという点である。経営統合案によると、CFS株式1株につき共同持株会社株式0.3株を、アイン株式1株に対し1.25株を割当て交付する内容となっている。統合発表日前日(10月4日)のアインの終値(2100円)から算出すると、CFS株式は504円で評価されたことになる。この案に対し、イオンは自らが提案する「企業価値向上策」を着実に実行することで、CFS株式は1株800円以上で評価されるべきとしている。「企業価値向上策」はイオンのグループ会社と提携することで企業価値を高めることができるという内容である。

この間の株価の動きを見ると、先述のように発表前日のアインの株価は2100円であり、経営統合発表時点ではCFSの株価は504円で評価されたことになる。一方発表前日のCFSの終値は430円であり、その時点では17.2%のプレミアムが付いていたことになる。しかし、12月18日にはアインの株価は1600円に下落したため株式移転比率から計算されるCFSの株価は384円となり、CFSの株価は510円に上昇したため、市場価格より割安に評価される結果となっている。経営統合が確実であれば、両社の株価は株式移転比率に鞘寄せされるので、市場ではこの経営統合の実現を不安視する見方が多いことを示しているとも言える。

2.経営統合後の新会社との提携がイオンにとって最適な戦略

以上の経緯を踏まえ、イオンの委任状争奪戦をどう評価すべきだろうか。まず、イオンの主張する株式移転比率が不当という点については、統合発表時には17.2%のプレミアムが付いた株式移転比率であり、その時点では不当な比率とは言えないのではないだろうか。むしろ2割近いプレミアムが付けられたことは、当時株価が低迷していたCFSに対するそれなりの配慮がなされていた表れと判断することもできる。

次に、イオンが主張するCFS株式価値が800円以上という主張はどうだろうか。この点を考えるに当たっては、2000年4月から今日まで7年以上にわたりイオンとCFSが資本・業務提携関係にあったという事実を無視できないのではないだろうか。つまり、これまでお互いの企業価値を高めるために提携関係にあったのであれば、提携の効果は統合発表時の株価(430円)に織り込まれていたことになる。この価格が不当ということは、市場の評価を無視する姿勢とも受け取られかねない。また、今後の「企業価値向上策」によって株価は800円以上になると主張されても、7年間の提携の効果が見えない中では、「絵に書いた餅」と評価されても仕方がないように思われる。

最後に、かりに委任状争奪戦でイオンが経営統合を阻止できた場合を想定してみても、イオンが期待する提携の効果は実現できるのであろうか。関係企業がお互いを信頼し、協力することによって初めて提携戦略が効果を挙げることは明らかである。委任状争奪戦という提携関係を崩すことにつながる手段の使用は、それが成功したとしても得るものはあまりないと思われる。

以上の点を踏まえると、アインとCFSの経営統合を容認し、経営統合後の新会社との新たな提携を模索することが、イオンにとって最も賢明な戦略のように思われる。

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