2007年11月09日

経済財政諮問会議(11月8日)~提示された税体系の抜本的改革の方向性

篠原 哲

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■見出し

・税体系の抜本的改革の方向性 と具体的な取組み
・求められる少子高齢化時代の税制の議論の進展

■introduction

11月8日の経済財政諮問会議では、「社会保障制度と財源のあり方(社会保障と税)について(税体系)」に関する議論がされた。社会保障と財源のあり方については、10月17日・25日の諮問会議でも議論されてきたが、今回は、社会保障制度と税制の整合性をとりながら、将来的な税体系のあり方についての議論が行われた。
会議では、有識者議員提出資料として、税制の抜本的改革についての方向性が提示され、
社会保障制度と一体的に税制改革を行なっていくための課題として、(1)成長力強化、(2)世代間・世代内の公平性の確保、(3)社会保障を支える安定財源の確保という3点が提示されている。
また有識者議員からの資料では、「成長力強化」、「世代間・世代内の公平性の確保」、「社会保障を支える安定財源の確保」という3点の課題の克服に向けて、以下の取組みが提案されている。
(1)の「成長力強化」については、具体的には、金融所得課税の一体化により投資家のリスクテイク能力を向上させることや、配偶者控除の見直しにより個人の労働意欲を高めることなどが提案されている。注目される法人税については、「法人の税負担水準について、常に国際的状況を念頭におく」との表現がされており、将来的な税率の引き下げの検討を示唆するものとなっている。
(2)の「世代間・世代内の公平の確保」については、公的年金等控除の見直しにより、現役世代の負担増の緩和を図ること。また、扶養控除や児童手当のように、税と社会保障で個別に実施されている、類似の目的を持った財政支援を一体化することや、低所得層について、収入に応じた税額控除や給付がなされる仕組みを設計することで、きめ細かい所得再分配を実現することなどが示されている。
さらには、相続税の在り方や役割を見直し、世代間の公平性に資するべく、社会保障給付の財源に充てるなどの提案もされている。
(3)の「社会保障を支える安定財源の確保」については、消費税の役割を検討し、増加する社会保障給付の安定的な財源として、景気変動に左右されにくい消費税の役割を高めていく方針を示している。
一方、資料では、上記の提案を実現するうえでの課題・留意点についても言及している。主なものをまとめてみると、まず(1)の「成長力強化」について提示された、金融所得課税の一体化については、上場株式等の配当や譲渡益に対する軽減税率の取り扱いを、法人税の税負担の引き下げについては、財政再建との両立を課題としている。
(2)の「世代間・世代内の公平の確保」では、「納税者番号の導入」など、世帯単位での所得を把握する方法の導入の必要性や、相続財産の正確な補足の必要性を指摘しており、(3)の「社会保障を支える安定財源の確保」では、消費税の役割の拡大にむけて、「歳出・歳入一体改革」の継続や、逆進性の問題の克服を課題として挙げている。

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