コラム
2007年10月25日

幼稚化する日本社会 - 成人式は何歳?

土堤内 昭雄

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日本人は長生きになり、長寿社会が到来した。長寿化は人生のなかの主要なライフイベントを先送りしている。

高校・大学等への進学率が上昇し、就職年齢が高くなった。長学歴化と就職の高年齢化は、晩婚化や晩産化をもたらす。そして子どもの成人や世帯分離の時期は遅くなり、親の退職の延期にもつながる。

このような人生の長期化は、人間の成長・発達も先延ばしにしているのだろうか? 最近では大学や大学院の入学式に親が同伴する学生も多い。また、親に向けた授業参観や高校の学習内容の補習、学費請求のみならず成績表などを親元に送るなど、大学の幼稚化とも思える状況がみられる。

先日、テレビのニュース番組で、来年春の新卒採用者の実家を企業の採用担当者が家庭訪問をしているという特集をやっていた。来年春に就職する学生の多くが、複数の内定通知を受け取っており、採用する側の企業としては、内定者の中から辞退者が出るのを少しでも食い止めようと腐心しているからだ。

そこで内定者の家庭訪問をして、親に対して会社の概要や業績等について説明。確かに学生にとって就職という人生の大事な岐路にあり、家族の声を聞くことは重要だが、最終的に判断するのは学生自身だ。まさか、企業の入社式に親同伴などということはなかろうに・・・。

日本では学生を含む20~34歳の若者のうち約4割はパラサイトシングルという親同居未婚者だ。それは子どもの経済的自立の遅れの表れでもあるが、同時に親の精神的自立を阻害している。

親による子どもの扶養期間の長期化は、親子相互の自立を遅らせる。子育ての究極の目標は自立した人間を育てることであり、「子の親離れ」と「親の子離れ」が重要なのだ。

今日の日本社会では、自立した「個」としての人間が育っていないように思える。子どもの巣立ちが遅れ、「成人式は30歳」という冗談が冗談に聞こえない。短命だった平安時代の成人式にあたる元服は15歳頃といわれるが、人生80年の長寿社会では、成人式も先送りされてしまうのだろうか?

前政権は「お坊ちゃま内閣」などと揶揄されたが、 日本社会全体の幼稚化は、国際社会における国家の存立にも影響しかねないのである。
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