2007年10月19日

経済財政諮問会議(10月17日)~2011年度の黒字化に必要な増税額

篠原 哲

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■見出し

・試算のポイント
・2011年度の黒字化に必要な増税規模
・求められる「歳出・歳入一体改革」の継続

■introduction

10月17日の経済財政諮問会議では、有識者議員提出資料として、中長期的な財政の姿についての試算結果が提示された。試算では、まず、異なる歳出削減規模や経済成長率が実現した場合において、「2011年度における国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化」に必要となる増税額がそれぞれのケースごとに示されている。
さらには、2011年度以降、「債務残高の名目GDP比を上昇させない」という縛りのもとで、2025年度までにおける「一人当たり医療・介護給付を維持する場合に必要となる国民の負担規模」、および「一人当たり負担を維持する場合に必要となる医療・介護給付の削減規模」も示されている。
試算のポイントとしては、まず、財政再建に向けて中長期的には一定規模の増税が避けられないこと、しかしながら高い経済成長を実現すれば、必要となる増税規模を軽減できることを、具体的な数値で示している点が挙げられる。さらに、高齢化により拡大していくことになる医療・介護等の社会保障給付費について、給付の削減と増税をどのように組み合わせて対応していくかの選択肢が国民に提示されていることも、今回の試算の特徴として挙げられよう。
諮問会議後の太田大臣の記者会見のなかには、「成長力をつけることで将来の負担は大きく変わってくる」、「成長を拡大させ、歳出削減をやっても足りない部分が出てくれば、それは増税で賄う」という趣旨のコメントがあるように、政府は、財政再建に向けて、まずは経済成長の拡大と歳出削減を先行することで、必要となる増税規模を抑制していくという方針を示している。
今回の試算でも、当面の焦点となる「2011年度の黒字化」については、最善のシナリオと位置づけられる「新成長経済移行シナリオ・歳出削減14.3兆円」のケースでは、増税なしでも2011年度の黒字化が可能としているが、その他のケースでは、2011年度の黒字化には、いずれも相応の増税が必要になるとしている。
このことを踏まえると、今回の試算結果は、将来的な増税規模を抑制していくためには、経済成長の拡大とともに、歳出抑制の継続が重要であるという、政府の方針をサポートする内容となっているとも言える。

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