コラム
2007年09月10日

サブプライム・ローン問題と格付け

経済研究部 専務理事   櫨(はじ) 浩一

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1.サブプライム問題の背後にある格付け

今回のサブプライム・ローン問題で注目されたものに、格付け会社の役割がある。米国の格付け会社であるムーディーズは、7月10日になってサブプライム関連の住宅ローン担保証券を大量に格下げした。これをきっかけに、サブプライム・ローンを直接・間接に組み込んだ証券化商品の価格が下落、取引が事実上停止して、価格評価もできなくなってしまった。サブプライム・ローン問題が深刻になってから大きく格付けが引き下げられたということに対して、格付け会社の能力に対する疑念の声が聞かれる。
   また、格付け会社が意図的にサブプライム・ローンを組み込んだ証券の格付けを高くして売りやすくしたのではないかという疑念の声も聞かれている。米国のサブプライム・ローン問題が飛び火した格好になった欧州各国からは、米国の格付け会社の行動に対する疑念の声が聞こえてくる。格付け会社は会計不祥事の「エンロン事件」でも問題が指摘されており、報道によれば米国でも議会が格付け会社の監督強化に動いているようだ。

2.格付けに求められるもの

しかし、証券の格付けにあまりに多くを期待し過ぎてはいけないのではないか。証券の売買に当たって格付けを利用するには、証券の発行に関与している当事者ではなく、第三者が評価したものであるという客観性が必要だ。この意味では、なんらかの規制を導入するなどによって、格付け会社の独立性を確保したり、評価手法を明確にしたりすることは重要だ。しかし、いくら格付け会社の規制を強化しても、格付けの精度を非常に高くして、問題が全く起きないようにすることができるとは思えない。
   格付け会社が最善をつくしてサブプライム・ローン関連債券の評価をしていたとしても、それが状況の変化を正しく予想できたかどうかは疑問である。「投資に関する最終判断は、お客様ご自身でお願い致します」という、決まり文句がここでも当てはまるだろう。ムーディーズが2002年5月に日本国債の格付けをボツワナ以下に引き下げるなど格下げが相次いだ際に、財務省が同社をはじめS&Pなど数社に意見書や質問状を送りつけたということもあった。日本国債はこうしたできごとにも関わらず買われ続け、長期国債金利は低下を続けたのだから、日本の投資家などが格付け会社の判断を単純にそのまま鵜呑みにして受け入れてきたという訳ではないのは明らかだ。

3.判断を狂わせる楽観

インタレスト・オンリー(当初数年間は利息の支払いだけ)、頭金なし、変動金利という米国の住宅ローンは、日本で問題となった「ゆとり返済」などの住宅ローンを想起させる。予想通りに経済が推移しているときは問題がないが、期待通りに所得が増加しなかったり、住宅価格が上昇しなかったりということが起きると、多くの行き詰まりが発生してしまう。日本のバブル景気でもそうだったが、経済全体がユーフォーリアに陥っているときに、状況を冷静に判断することは極めて困難だ。資金の借り入れ側も、貸付側も、そしてそれを評価する格付け会社も金融市場も、全体が楽観的過ぎたのだろう。米国の住宅市場の調整が長引き、その影響が出ることは避けられないだろう。救いは、日本のバブルのように個人の住宅だけでなく企業の不動産投資をも巻き込んだものではなかったことである。

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経済研究部   専務理事

櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)

研究・専門分野
マクロ経済・経済政策

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