コラム
2007年08月20日

中高年で「遠距離」といえば

常務取締役理事   神座 保彦

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若い人の間で「遠距離」といえば、専ら「遠距離恋愛」を意味するそうだが、中高年世代における「遠距離」は何を意味するであろうか。この問いに対する回答として、もちろん「遠距離恋愛」は重要な位置を占めようが、これに加えて中高年層では「遠距離介護」という重い問題が浮上してくる。

夫婦のみの高齢者世帯の増加、あるいは高齢者の単身世帯の増加は、離れて暮らす子からすれば、遠距離介護問題に直面する可能性の増加に他ならない。親の介護が必要な状況に直面したといっても、老親の間で「老老介護」という不安定な状況ながら辛うじて介護関係が成り立つような場合や、「スープの冷めない距離」に子が住んでいるような場合であれば、不幸中の幸いの部類に入ろう。

やはり、対処が難しいのは、親との距離が遠いケースである。親が直接的に介護を必要としている場合は当然だが、仮に、目先は老老介護に依存できる場合であっても、子に期待される部分は重い負担を伴う。

親が高齢者であれば、子といっても中高年世代であり、自分自身が要介護となるリスクさえ意識すべき段階に差し掛かっている。なおかつ、子の世代といっても兄弟がそれほど多くない場合は1組の夫婦が実父母と義父母の両方を介護するといった状況さえ出てくる。

子である中高年世代が担う遠距離介護は、「介護別居」、「介護離婚」という事態をも派生しかねない重大な事柄である。親を呼び寄せての同居ができれば、介護別居の必要性は低まるが、生活環境の激変に直面する親にとってみればストレスが高まり、病状の悪化にもつながりかねない出来事である。このような状況下で妻に介護負担が集中した場合には介護離婚の可能性は高まる。介護離婚で妻が家を離れるような事態に遭遇すると、残された夫には手に負えない状況が出現する。何とも対応が難しい問題である。また、個人の力の限界を感じざるを得ない問題でもある。

このような流れの中で、遠距離介護を支援する動きも出てきている。NPOや企業が様々なサービス提供を行っている。有料ではあるが、海外赴任者が日本に残してきた老親を、本人に代わってケアするプログラムもといったものも提供されるようになっている。もちろん、子が親に対して行うことと、これら組織が提供するサービスとは本質的に異なる部分はあるものの、専門家としての能力は当事者に対する強力な支援となる。また、企業が従業員福祉の一環で、このようなサービスを利用しやすくする制度を導入する例も出てきている。今後、高齢社会全体の設計のなかで、このような機能がビルトインされる方向性が期待されるところである。

常務取締役理事

神座 保彦 (じんざ やすひこ)

研究・専門分野
ソーシャルベンチャー、ソーシャルアントレプレナー

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