2007年08月10日

平成20年度概算要求基準~注目される歳出抑制路線の継続

篠原 哲

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・平成20年度概算要求基準のポイント
・注目される歳出抑制路線の継続

■introduction

8月10日に平成20(2008)年度予算の大枠となる「概算要求基準(シーリング)」が閣議了解された。政策的経費である一般歳出の上限は、ほぼ2007年度当初予算なみの47.3兆円(2007年度当初予算:47.0兆円)に設定された。
今回の概算要求基準は、7月29日の参議院選挙で自民党が敗北した直後であるため、事前には、地方への配慮や格差是正等を目的とする歳出の拡大圧力が強まる可能性もあった。しかしながら、今回についても、(1)財政健全化の努力を継続していく。(2)歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、歳出抑制と予算配分の重点化・効率化を実施。(3)基礎的財政収支の改善を図り、国債発行額を極力抑制する。という従来までの方針が引き続き掲げられ、昨年の「基本方針2006」で示された、「歳出・歳入一体改革」に基づく、歳出削減路線が継続される形となった。
概算要求基準の内訳を項目別に見てみると、まず、参院選の自民党の敗北を受けて、歳出拡大圧力が高まりつつある公共事業関係費については6.7兆円と、2007年度当初予算の6.9兆円から▲3%の減少となった。公共投資の削減については批判的な意見が聞かれ始めており、「対前年度▲3%の削減」が実現するか注目されていたが、結果として公共投資の削減路線は維持されたことになる。
また、高齢化による自然増の抑制に注目が集まっている「年金・医療等に係る経費」は21.0兆円と、2007年度当初予算の20.4兆円からは5300億円の増加となった。「歳出・歳入一体改革」では、一般会計ベースでは、約7500億円となる社会保障費の自然増を、制度改革等により毎年約2200億円程度削減していく方針が示されているが、今回の概算要求基準もそれに沿ったものとなっている。
義務的経費、人件費、そしてそれらを除いたいわゆる「その他経費」についても昨年の「19年度概算要求基準」と同様の枠組みが用いられており、洞爺湖サミットなどの特殊要因を除くと、対前年度と同額、もしくは▲1~3%減の基準が設定されている。
なお、今回の概算要求基準でも、例年通り、公共事業関係費および「その他経費」については要望基礎額の2割増しの水準まで要望を提出することが可能となっている。さらに、成長力強化、地域活性化、環境立国戦略、教育再生、生活の安全・安心等の安倍政権にとっての重点施策については、各省が要望額を上乗せできる仕組みである「重点施策推進要望」として、昨年度の3000億円から倍増となる6000億円が設定された。
実際には、これらの要望枠により、一般歳出の上限として定められた47.3兆円の枠が拡大する訳ではないが、参院選以降において高まっている、歳出削減路線への批判的な意見に対しても、一定の配慮を示した格好となっている。

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