コラム
2007年08月08日

コムスンの事業分割譲渡にみる介護保険の新しい姿

  阿部 崇

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コムスン事件が報道されてから丸2ヶ月が経過した。一連の報道もひと段落し、利用者の不利益回避、営利法人参入の是非などの議論もメディアに取り上げられることは少なくなった。その中で、コムスンの展開する介護事業の譲渡問題については着々と準備が進められている。
先月末に同社が厚生労働省に提出した事業移行計画には、“訪問介護等の在宅サービスを47都道府県ごとに分割譲渡し、有料老人ホーム等の居住系サービスを一法人に一括譲渡する”とあり、現在は譲渡先の公募と選定準備が行われている。

もともと介護保険制度は、基本的な運営を保険者である市町村が担い、その周辺の事業者・施設の指定や監督等の事務について都道府県が担当する「地域保険」であることに鑑みれば、多くの在宅要介護者(被保険者)が利用する在宅サービスが都道府県単位に分割譲渡されることは、ある意味“望ましい流れ”と言える。
しかし、本件が単なる個社の不正や行政処分後の対応の問題に止まらないことは、既に指摘した通りであり(6月7日「社会保険制度の構造的な見直しを今-コムスンへの行政処分が示唆するもの-」)、制度が抱える構造的な問題と併せて検討されなければ、地域ごとに行われる事業譲渡も必ずしも“望ましい結果”をもたらすとは限らない。
つまり、不正の再発防止策に止まらない“サービス事業者の事業運営の「持続可能性」”を支える制度作りこそが、コムスン事件の終着点なのである。

介護保険は「地域保険」である。とすれば、事業譲渡は都道府県をはじめ地域の判断が最大限尊重される仕組みが必要だが、それが十分に行われていない。今回、同社が対厚労省レベルで進める「移行計画の策定」「譲渡先候補の評価委員会の設置」などは、それぞれの地域特性・事情を踏まえて行われるべきであり、対都道府県の作業とすることは今からでも十分に間に合うはずである。不正を発端とした事業譲渡である以上、各都道府県がきちんと関与できる環境作りが優先されることが望ましい。

そしてさらに、一連のコムスン事件をきっかけに、国は、介護保険の制度運営の中核を都道府県に“分割譲渡”すべきではないだろうか。具体的には、「介護報酬の改定(単価設定)」「事業者・施設の指定(更新)要件の設定」「人員配置・運営基準の設定」という制度運営の3大要素を都道府県の自治事務として移譲し、真の地域保険として、“利用者にとっても” “事業者にとっても” “運営者にとっても”持続可能性のある制度作りを目指すべきではないか。
“運営基準や指定要件は日本一厳しいがサービスの単価も質も日本一”   ―――   住民(被保険者)・サービス事業者・地方行政それぞれの納得の下で、そんな地域格差はあってもいいはずである。

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