2007年06月25日

不動産投資信託(J-REIT)の事業効率格差に関する考察 -規模の経済性、事業効率性と投資口パフォーマンスへの影響-

  浅原 大介

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2001年9月、日本に不動産投資信託(J-REIT)市場が創設されてはや5年半が過ぎ、国内のみならず海外投資家の資金をも招き入れながら、その市場規模は時価総額でおよそ6.6兆円にまでになった。本論文は、そうしたJ-REIT市場に関して、パラメトリックな生産性分析ツールである確率的フロンティアモデル(SFM)を用いて事業効率性を定量化するとともに、コブ・ダグラス型費用関数にしたがった規模の経済性を評価し、J-REIT が本来有する属性に応じて、効率性、規模の経済性がどう異なるかを検証した。また、その結果得られた効率性指標が、投資口パフォーマンスについて与える影響を実証的に分析した。更に、外部運用型で、その資産運用会社に出資する企業の影響を強く受けるという日本特有の事情を考慮し、これらスポンサー企業に関する数値データを取り入れることで、その影響の計測を試みた。以上の分析の結果、以下の結論を得た。
1.
J-REIT の総運営コストは各々の総資産残高を説明変数として、ほぼ全てが説明される。また、資産運用会社のスポンサー企業に関する変数の中で、コスト構造に影響を与えているのは、スポンサー企業から資産運用会社への出向者の比率と、筆頭株主の株式時価総額となった。それぞれスポンサー企業自体の規模とJ-REIT に対するその影響力、及びネーム・バリューが、関係するJ-REIT の残高拡大に貢献した結果と解釈できる。
2.
費用関数の派生関数として規模の経済性指標が求まる。日米のREIT 運用形態の違い、費用構造の違いを反映して、日本の方が規模の利益を享受できなくなる総資産残高の水準が低いことが分かった。また米国と異なり、負債比率(LTV)の高低による規模の経済性の違いはみられなかった。
3.
SFM の推定残差である効率性指標にもとづくと、事前の予想に反し、LTV の高低は必ずしも効率性の良否を表さないことが判明した。また、同指標から判断すると、総合型が最も非効率なグループ、特化型が最も効率的なグループと判断された。複合型は非効率とは断定できないものの、平均総資産残高が相対的に小さく、比較的新しいファンドが多いこともあり、規模の利益が残存するセクターであることが分かった。
4.
伝統的バリエーション指標の中では、PER が最も有効であるが、加えて、規模の経済性指標、効率性指標を考慮することで、中期的な運用パフォーマンス改善が期待できる。特に、第1 分位のパフォーマンスには全期間にわたって大きな改善がみられた。また、効率性判定に関するスポンサー企業の影響は、売上高と出資比率加重時価総額に大きくみられ、その影響度は元来非効率だったJ-REIT に大きく、効率的であったものについては軽微であった。また、スポンサー企業変数考慮後の投資口パフォーマンスは僅かに安定度が増すものの、大きな改善は見られなかった。

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