2007年06月01日

金融政策・市場の動き(6月)~緩やかに個人マネーが定期預金にシフト

総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次

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  1. (トピックス)短期金利の上昇に伴い、緩やかに個人マネーが定期預金に戻り始めている。現段階では、貯蓄から投資への流れが圧倒的で、個人マネーが再び預金に戻る動きは少ない。ただし、08年にかけて、証券税制の見直し、企業部門の資金余剰が縮小していくことで貸出金利上昇→預金金利の引き上げに金融機関も動きやすくなり再び預金選好の動きは強まる可能性はあるだろう。
  2. 失業率が9年ぶりに4%を割り込んできたこともあり、このまま景気回復が続けば、07年度下期には、「労働需給の逼迫→賃金上昇→サービス価格上昇→コアCPI上昇」が展望できる状況にはなっている。その景気モメンタムは少し停滞気味である。生産調整が軽微ですむかどうかは、輸出を左右する米国経済が4-6月以降どうなるかにかかっている。
  3. 4月展望レポート公表後、福井総裁を含め審議委員から早期利上げに対して積極的な発言が相次いだ。水野審議委員は早ければ7月の決定会合で利上げ提案を行う可能性は高い。早期利上げは「物価マイナスの中での利上げ」に踏み切れるかどうかになってきている。
  4. 長期金利は、足元、(1)米国の長期金利上昇、(2)早期利上げ観測の高まりから上昇圧力がかかっている。ただし、賃金上昇が見えず連続利上げ観測が醸成されにくく、金利上昇幅も限定的となるだろう。
  5. 円ドルレートは、日米の絶対金利差に着目したドル投資の流れが継続することでドル堅調の流れは続くだろう。ただし、年後半以降は、(1)日銀の追加利上げ観測の高まり、(2)08年の大統領選挙を控え再び米国の対外不均衡問題が市場でテーマとなりはじめることもあり、円高基調に転じると予想。
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総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

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